コンタクトセンターなど顧客サポートを行う現場では、コロナ禍を経て、人手不足・採用難が再び深刻になり、在宅シフトの継続、自動化や自己解決促進へのIT投資に注目が集まっています。

在宅シフトや自動化を促進する上で鍵となるのが、自動化と有人対応を組み合わせたチャットサポート(ノンボイスシフト)です。

本記事では、チャットサポートが人手不足・採用難の課題解決にどのように役立てるか解説します。

目次

・再び採用難が到来、オペレーターの採用・育成が最も深刻な課題
・半数以上が在宅でのコンタクトセンターを運用、労働者も継続希望を望む声多数
・電話サポートにおけるオペレーターのストレス
・経営視点でのノンボイスシフトの価値・チャットサポートの現状と課題

・チャットサポートの現状と課題
 ー人が対応することより「簡単に」「いつでも」「問題が解決できること」が求められている
 ー幅広い年代で、チャットでの問い合わせ経験が増えている
 ー自動化や自己解決促進ソリューションと比べて、有人チャットは導入の優先順位が低い
 ー利用経験が増える一方で期待値との差で不満が募る
・顧客対応のノンボイス化には、自動化と有人のハイブリッド対応が不可欠
 ーチャットボットは使い方次第で満足度が高くなる
 ー個人情報取り扱いが、ノンボイス業務拡張への課題
・人手不足・採用難の課題と向き合うチャットサポート導入について

再び採用難が到来、オペレーターの採用・育成が最も深刻な課題

コンタクトセンター(コールセンター)など顧客サポートを行う現場では、人手不足・採用難は慢性的な課題ですが、コロナ禍の2020年は、飲食業や旅行業など他業種から人材の流入が増え、有効求人倍率1.04倍となり、一時的に採用難が緩和されました。

2022年後半では元の業界に人が戻り始め、11月時点では有効求人倍率1.35倍と上がっています。
オペレーターの採用状況について調査した『コールセンター白書2022」の結果でも、「全拠点でかなり厳しい」と回答した割合は、2021年は10.2%でしたが、2022年では34.8%と3倍以上に増えている結果でした。

オペレーターの採用状況についてのグラフ

また、「もっとも深刻な運営上の課題」でも、「オペレーターの採用・育成」が19%と最多でした。こうした調査結果からも、再び人手不足・採用難が到来していることが伺えます。

もっとも深刻な運営上の課題のグラフ
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半数以上が在宅でのコンタクトセンターを運用、労働者も継続希望を望む声多数

『コールセンター白書2022』によると、2022年7月時点で在宅でのコンタクトセンターを運用していると回答した割合は、半数を超えていました。

「恒常的に一定の比率で運用する方針」と61%が回答し、在宅でのコンタクトセンターを今後も継続する意向が多いことが分かりました。

在宅センターの運用と実施方針のグラフ

一方、テレワーク実施者のテレワーク継続意向推移の調査結果では、2022年7月時点では8割以上が継続希望の結果でした。労働者のテレワークの活用意向は高いことが伺えます。

テレワーク実施者のテレワーク継続希望意向推移のグラフ

電話サポートにおけるオペレーターのストレス

従来のメインチャネルである電話でのサポート業務は、迅速かつ効率的な問い合わせ対応が求められたり、同じような質問に繰り返し回答したり、多様な働き方が難しかったり、直接電話でクレームを受ける……

など、オペレーターにかかるストレスが大きく、離職率の高さや採用の難しさにも繋がっていました。
高ストレスな電話サポート対応を、チャットサポートなど「ノンボイスシフト」することで、業務効率化や人でしかできないサポートに集中できたり、労働者からも継続意向が高い「在宅シフト」による多様な働き方の実現や、直接電話で受けないことによるストレス減といった効果を期待できます。

電話サポートから在宅・ノンボイスシフトで期待できる効果についてまとめ

経営視点でのノンボイスシフトの価値

オペレーター視点での効果はもちろん、経営視点でみてもノンボイスシフトの価値は高いです。

顧客満足度の向上

チャットボットやFAQなどが多頻出で簡単な対応を担うことで、優秀なオペレーターは「人ならでは」の付加価値の高い業務や難易度の高い顧客対応により集中できるようになり、顧客満足度向上を期待できます。

新たなキャリアパスの創出

チャネルの最適化、チャットボットのAIチューニングやシナリオ改善など複数チャネルを管理するスーパーバイザーとして業務の幅が広がり、高度なキャリアパスが提供できます。

従業員満足度の向上

オペレーターのストレス軽減による離職率の低下、多様な働き方の提供など採用難の課題にアプローチできます。効率的なセンター運営にて、モチベーション維持・応対品質向上にも繋がります。

チャットサポートの現状と課題

人が対応することより「簡単に」「いつでも」「問題が解決できること」が求められている

ユーザーが問い合わせに求めていることは、「簡単に」「いつでも」「問題が解決できること」です。

電話で人が丁寧に対応することよりも、ユーザーの嗜好性に合わせた、マルチに対応できるコンタクトセンター設計が求められています。
「ユーザーが問い合わせの際に不満に感じていること」を聞いた調査では、「担当者に繋がらない・待たされる」が最多でした。「いかに待たせずにすばやく問題解決してもらうか」が満足度に大きく影響すると言えます。

これまでお客さま窓口へ問い合わせを行った際に、不満に思ったことのグラフ

幅広い年代で、チャットでの問い合わせ経験が増えている

「チャットでの問い合わせ経験」を聞いた調査では、約7割が「経験あり」でした。年代別でも、若年層はもちろん、高齢層の60代で57%、70歳以上でも48%が経験ありと、幅広い年代でチャットでの問い合わせ経験が増えていることが分かりました。

これまでチャットで問い合わせをしたことがありますか?グラフ

自動化や自己解決促進ソリューションと比べて、有人チャットは導入の優先順位が低い

ITソリューションへの投資意欲が高まっていますが、「コールセンターのIT機能で強化の優先度の高いソリューション」を聞いた調査では、「FAQなどナレッジ構築ソリューション」「チャットボットやボイスボットなどの応対自動化ソリューション」が上位と、自動化や自己解決促進のソリューションが主で、有人チャット導入の優先順位は高くありません。

コールセンターのIT機能で強化の優先度の高いソリューション

利用経験が増える一方で期待値との差で不満が募る

「チャットでの問い合わせ経験者に問い合わせの際に不満に感じたこと」を聞いた調査では、「チャットで対応できる範囲が少なかった」「話がかみ合わなかった」「解決できない場合、そのままチャットで人に対応してほしかったが連携していなかった」が上位でした。

チャットで問い合わせをした際に、不満に感じたことを全て選んでください

顧客情報を管理するシステムとのシームレスな連携ができていないことや、チャットの対応範囲が狭いことが、チャットでの利用経験者の不満に繋がっているようです。

チャットでの問い合わせ経験者が増える一方で、期待値との差をいかに減らしていくかが課題となっています。

顧客対応のノンボイス化には、自動化と有人のハイブリッド対応が不可欠

顧客対応でチャットを活用していく際に欠かせないのが、自動化と有人のハイブリッド対応です。

有人対応と自動対応のハイブリッド対応

例えば、オペレーター対応前の「事前ヒアリング」や、有人で対応中に「定型業務」が発生した際にはチャットボットで自動対応、と臨機応変に行き来するイメージです。
対応内容に応じて、有人対応とチャットボットによる自動対応をシームレスに繋げ使い分けることで、有人対応のAHT(Average Handing Time、一対応にかかる平均処理時間)を削減することができます。

チャットボットは使い方次第で満足度が高くなる

チャットボットは「シナリオ型チャットボット」、「AI型チャットボット」の2種類があり、「シナリオ型チャットボット」は決められたことを聞き取って処理するという単機能に絞ったチャットボットで、この満足度は高い傾向にあります。

「AI型チャットボット」は「なんでも聞いて」とすると正答率が低くなります。しかし例えば、電力会社等で問い合わせのピークとなる引っ越し時期の3月に「引っ越しだけに関するチャットボットです」と割り切ってAI型チャットボットの構築を行うと、正答率は高くなります。

チャットボットは使い方次第で満足度を高められると考えます。ですので、ここを「どのように人がフォローするか」、「電話とノンボイスをいかに組み合わせて最適なチャネル誘導をするか」が重要なのです。

個人情報取り扱いが、ノンボイス業務拡張への課題

ノンボイスシフトの上で重要になるのが個人情報の取り扱いです。特に金融機関において本人確認を伴う業務など個人情報の取り扱い可否は、ノンボイス業務の範囲に大きな影響を及ぼします。

本人確認をともなう問い合わせ業務の割合

金融機関において本人確認を伴う問い合わせ業務は、問い合わせ全体の60~80%とも言われています。

そのため、

「ノンボイス対応のシステムでのセキュリティポリシー適合が出来ないため、認証の取れている電話で対応せざるを得ず、電話が減らない」

「セキュリティ担保しやすいマイページによるWebフォームを用意しても、IDやパスワードを覚えてもらえず利用率が低い」

「音声のみの電話や、利用頻度の低いマイページでカバーできない対応が残り、いまだに書面(紙)での手続きをなくすことができない」

といった課題が出てくるのです。

情報セキュリティポリシーに適応した形で、自動対応、有人対応をシームレスに行う必要や、WebやLINEなど複数チャネル対応においてもセキュリティ適応を可能にしていくことが必要です。

これからのチャットに必須な、個人情報取り扱い業務の効率化とは

人手不足・採用難の課題と向き合うチャットサポート導入について

コロナ禍の落ち着きとともに、再び採用難・人材不足が深刻化してきました。自動化促進ツールが活発化する中で、ChatGPTなど大規模言語モデルの登場により、企業と顧客の関係を変化させ、サポート業界は大きく変わることが予想されます。

その中で、有人対応はより個別性と難易度が高いものが残るので、「有人対応が必要な業務範囲」について視点を当てて考えることが重要です。

自動化と有人対応の適切な組み合わせにより、「有人だからこそ対応できる」業務にリソースを割くことができると、顧客満足度向上や業務効率化に繋がっていきます。

チャットサポートなどノンボイスシフトする際は、「ツール単体の導入ではなく、顧客サポートのコアとなる業務フローを俯瞰して考える」、「有人対応と自動化ツールの連携により、顧客対応オペレーションを設計する」、「個人情報によりカバー範囲を制限しないソリューションを展開する」これらのポイントを抑えることが成功の鍵となります。

モビルスでは、チャットサポート導入で実現する顧客満足度の向上と業務効率化についての「EBook」を公開しています。下記より無料でダウンロードできますので、ご興味いただけましたら、ぜひご覧ください。