<2024年8月30日→2024年10月29日更新>
「放棄呼」は、顧客体験を損なうだけでなく、企業の信用にも影響を与える重要な指標です。コールセンター白書2023によると、重視している品質基準(KPI)において放棄呼率(応答率)は85.9%と圧倒的多数を占め、最も重視しているKPIとされています。
当記事では、放棄呼の定義からその計算方法と目安、その放棄呼が発生する主な原因について詳しく解説します。さらに放棄呼を減少させるために効果的な改善方法も5つご紹介しますので、コールセンター(コンタクトセンター)の運営を最適化する方法として、ぜひお役立てください。
<目次>
放棄呼とは?
まずは、放棄呼の意味と計算方法、目安について、見ていきましょう。
放棄呼とは、アバンダン・コールとも言い、コールセンターでオペレーターに接続される前に顧客が切断したコールや、システムがコールの集中により自動的に切断したコールを指します。
放棄呼は、コールセンターにおける主要なKPI(重要業績評価指標)の一つです。顧客がオペレーターにつながるまでのプロセスのスムーズさ、つまり、つながりやすさを測る上で非常に重要視されています。
待ち呼・あふれ呼との違い
放棄呼とよく似た言葉に、「待ち呼」や「あふれ呼」というものがあります。これらはどちらも、オペレーターにつながらない状態を指す言葉です。
コールセンターでは、顧客がオペレーターに接続されるまでの待機時間が長くなると、顧客は通話を放棄してしまうことが多く、この状況が「放棄呼」となります。つまり、「待ち呼」や「あふれ呼」の状態が続くと、その先に「放棄呼」が発生する可能性が高まるのです。
放棄呼率の計算方法
コールセンターにおいて、放棄呼の多さを測るためには、「放棄呼率」を算出することが重要です。放棄呼率とは、全コール数に対する放棄呼数の割合を示す指標です。この放棄呼率は、コールセンターのパフォーマンスや顧客対応の効率を評価する際に役立ちます。
放棄呼率を求める計算式は以下です。
放棄呼率 = (放棄呼の数 ÷ コール数)× 100
この計算により、コールセンターにかかってきた全コールのうち、どの程度が放棄呼になっているのかを数値で把握することができます。
放棄呼率の目安
コールセンターでの平均放棄呼率は、一般的に約9.91%といわれています。しかし、理想的なコールセンター運営を目指す場合、放棄呼率は0%、もしくはそれに近い数値であることが望ましいとされています。
放棄呼率が低いほど、顧客がオペレーターにスムーズにつながりやすく、満足度が向上します。逆に、放棄呼率が高い場合、顧客がコールセンターの対応に不満を抱き、企業全体のイメージにも悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、コールセンターでは、放棄呼率を可能な限り低く抑えるための改善策を継続的に講じることが重要です。
放棄呼が発生してしまう原因とは?
では、なぜ放棄呼は発生してしまうのでしょうか。放棄呼の発生原因を4つご紹介します。
自動音声機能(IVR)の問題
放棄呼の主な原因の一つは、自動音声応答システム(IVR)の操作や導線が複雑であることにあります。IVRシステムは、顧客がプッシュ操作や音声認識を利用することで、あらかじめ録音された音声を自動的に再生し、適切な案内や処理を行うものです。
このシステムには、オペレーターの負担を軽減し、業務の効率化を図り、あふれ呼を防ぐといったメリットがあります。
しかし一方で、顧客にとっては手間が増えるというデメリットもあります。特に、プッシュ操作の繰り返しやガイダンスの説明が長すぎる場合、あるいはオペレーターにつながるまでに多くの操作が必要な場合、顧客はストレスや不満を感じやすくなります。
この結果、顧客がオペレーターに接続される前に電話を切ってしまい、放棄呼が発生することがあります。
オペレーターの不足
コール数に対してオペレーターの数が不足している場合、前述した「あふれ呼」や「待ち呼」が発生します。このような状態が続くと、顧客が長時間待たされることになり、結果として放棄呼につながる可能性が高まります。
「あふれ呼」や「待ち呼」は、オペレーターにつながるまでの待機時間が長くなることで、顧客が不満を感じ、最終的に通話を切ってしまうことを指します。したがって、オペレーター数が不足している限り、放棄呼が発生し続ける原因となります。
オペレーターのスキル不足
オペレーターの顧客対応スキルが不足していることも、放棄呼が発生する原因の一つです。オペレーターのスキル不足によって、1件あたりの問い合わせ対応時間が長くなったり、対応が不十分なためにクレームが増えたりすることがあります。
このような状況では、オペレーターが一度に対応できるコールの数が限られ、他の顧客が「あふれ呼」や「待ち呼」となってしまう可能性が高まります。これがさらに放棄呼の増加につながります。
問い合わせの手段が少ない
問い合わせ手段が「電話」に限定されている場合、顧客の問い合わせがコールセンターに集中しやすくなります。その結果、呼量が増加し、オペレーターに繋がりにくい状況が生じます。このような状況では、顧客が長時間待たされることにより、放棄呼が増加する傾向があります。
さらに、電話が繋がらない場合には、「しばらく経ってからおかけ直しください」といったアナウンスが流れ、システム側が一方的に通話を切断することもあります。このようなケースでは、顧客がオペレーターに繋がることなく放棄呼となってしまうため、顧客満足度の低下につながる可能性があります。
放棄呼が生み出す問題点とは?
では、放棄呼はどのような問題を引き起こすのでしょうか。3つの問題点「顧客満足度の低下」「機会損失」「オペレーターの負担の増加」を詳しく見ていきましょう。
顧客満足度の低下
放棄呼は、顧客満足度にも悪影響を及ぼします。問い合わせをしてくる顧客は、サービスに対して何らかの要望や問題解決を期待しています。しかし、電話が繋がらなければ、「時間を無駄にした」や「面倒な操作を強いられた」といったストレスを感じることになります。このような経験は、顧客に対する企業の印象を悪化させ、満足度の低下につながります。
一部では、「後でこちらから掛け直せば(コールバック)問題は解決するのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、コールバックは顧客が望むタイミングで行われるわけではないため、放棄呼によって生じた不満を完全に解消することは難しいのが現実です。顧客が問い合わせをしたいと感じた瞬間にスムーズに対応できることが、顧客満足度を高めるためには不可欠です。
機会損失
ユーザーが問い合わせをするということは、何らかの要望や問題を抱えていることを意味します。しかし、電話がつながらないことでその問題が放置されると、ユーザーは不満を募らせ、別のサービスや製品に乗り換えようと考えることがあります。たとえ放棄呼に至らなくても、待ち呼になった時点で、顧客体験の質が低下しています。このような状態が続けば、ユーザーは「もうこの企業のサービスを使いたくない」と感じるようになるでしょう。
オペレーターの負担の増加
多くの企業では、放棄呼が発生した場合、後から掛け直す(コールバック)というルールを設けています。しかし、コールバックの件数が増えると、結果的にオペレーターの仕事量も増加します。電話番号を調べてかけ直すだけでも、労力が割かれるだけでなく、その間に新たな入電に対応できないため、さらに放棄呼が発生するという悪循環に陥る可能性があります。
放棄呼への対策とは?
放棄呼を削減したり、未然に防いだりする方法として、実施したい5つの対策をそれぞれ見ていきましょう。
- 自動音声機能(IVR)を整備する
- ビジュアルIVRの活用
- ボイスボットの活用
- オペレーターの適切な教育を実施する
- チャットボットの導入
- FAQの設置
自動音声機能(IVR)を整備する
自動音声機能(IVR)を導入している企業では、放棄呼の削減に向けた第一歩として、IVRの見直しが重要です。IVRはオペレーターの負担を軽減するための有効な手段ですが、オペレーター側の事情ばかりに気を取られると、ユーザーにとって使いにくいシステムになっている可能性があります。
見直しの際には、次の3つのポイントを重視することが求められます。
- 階層を深くしすぎず、3~4回のやり取りで目的にたどり着けるように設計すること
- ガイダンスは冗長にならないように注意すること
- ユーザーが早い段階(階層が浅い段階)でオペレーターにつながるようにすること
ビジュアルIVRの活用
自動音声機能(IVR)の導入により、スムーズな案内が可能になる一方で、「音声ガイダンスの長さ」や「プッシュ操作の繰り返し」に対する不満の声も多いのが現状です。しかし、こうした不満を払拭するために「ビジュアルIVR」を活用することが効果的です。
ビジュアルIVRとは、スマートフォンなどの画面上にメニューを表示し、顧客が迅速に問題を自己解決できるようにするシステムです。自己解決ができた場合、オペレーターの対応が不要となるため、結果として放棄呼の削減につながります。
ボイスボットの活用
AIを活用したボイスボットであれば、自然言語処理技術を駆使して顧客の質問に応じることができます。ビジュアルIVRとは異なり、より柔軟で直感的な対応が可能になります。
ボイスボットを導入することで、基本的な問い合わせにすぐに応対することができ、顧客の待機時間の短縮を実現します。それとともに、ボイスボットは24時間365日稼働ができるため、顧客がいつでも問い合わせを行える環境が整います。また、顧客の過去のやり取りを学習し、個々のニーズに応じてパーソナライズした情報の提供も可能になります。
定型的な質問が得意なビジュアルIVRと、顧客のニーズに応じて柔軟に即時応答ができるボイスボットを特徴に合わせて使い分けることで、顧客が求める情報を迅速に提供することができ、放棄呼の削減に貢献します。
オペレーターの適切な教育を実施する
放棄呼の削減には、オペレーターへの研修の実施や、マニュアル・FAQナレッジの整備も急務です。対応スキルの向上はもちろん、自社で販売している商材への理解が不足していれば、顧客対応に必要以上の時間がかかってしまうことになります。そのため、オペレーターが商材をしっかり理解することも欠かせない要素です。
問い合わせ手段の拡充
入電の集中を回避するため、顧客が問い合わせをするチャネルを複数用意することも、改善策となります。
チャットボットの導入
チャットボットとは、顧客からの問い合わせに対して、ロボットが自動的に返答を実施する仕組みです。この返答はテキストベースで行われます。チャットボットを設置することで、顧客の自己解決を促し、電話での問い合わせ件数や放棄呼の削減が期待できます。
FAQの設置
FAQ(よくある質問)のサイトへの設置も放棄呼対策には有効です。FAQが充実していることで、顧客の自己解決を促進できるため、結果としてコール数が減少し、それに伴い放棄呼も減少します。また、オペレーター側も呼量が減ることで、より余裕を持った対応が可能になります。
まとめ
コールセンター(コンタクトセンター)の運営に置いて、放棄呼は避けては通れない課題と言えるでしょう。しかし、適切な計算方法を用いて現状を把握し、目標とする指標を設定することで、放棄呼の削減に向けた具体的な対策を講じることができます。今回ご紹介した改善方法を参考に、放棄呼を減らし、顧客満足度の向上を目指しましょう。
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