2021年9月のデジタル庁創設に向け、全国の行政・自治体業務にデジタルトランスフォーメーション(DX)の波が訪れています。
例えば、脱ハンコによる各種給付金のスピードアップやスマホでの行政手続き完了、オンラインでのワクチン接種受付やオンライン診療、デジタル教育などです。デジタル化の利便性を実感できる社会が、住民から求められる時代になっています。
一部の自治体では住民向けサービスの一貫として、情報配信や道路や街の不具合通報、手続き処理や、問合せ対応、いじめ相談など、生活の向上に関わる様々な用途での業務DX推進が始まっています。
配信とチャットボット、ボイスボットなどの組み合わせによる問合せ対応を可能にすることは、住民にとって大きなメリットです。
さらに、運用する自治体にとっても、対応業務の負担軽減となり、現場における「働き方改革」の一貫としての業務効率化も期待できます。
当記事では、自治体DXの中でも住民とのコミュニケーションに関わる、情報サービスのデジタル化について、実際の活用事例とともに紹介します。
住民サービスにLINEが使われる理由
自分の住んでいる市町村のLINE公式アカウントを登録していますか?
ここ数年、住民向けサービスの一環にLINE公式アカウントを使う自治体が増えています。なぜLINEが使われるのでしょうか。
【国内8,600万人が利用、開封率7割】
LINEは国内8,600万人が毎月一回以上利用(そのうち85%が毎日利用のアクティブユーザー)しており、コミュニケーションインフラとなっているツールです。開封率も7割近くあると言われていて、多くの人に情報を届けやすい手段だと言えます。
【地方公共団体向けLINEアカウントが無償開放】
また、2019年7月より今まで月額固定費15,000円、メッセージ送信重量課金3円/通かかっていたLINE公式アカウントの利用料を、地方公共団体向けに無償提供が開始されています。
これにより多くの自治体でLINE公式アカウントの活用、住民向けの情報配信の活用の導入が進んだのではないでしょうか。
LINE公式アカウントの利用実態の調査レポート
Mobilus SupportTech Labが実施した「LINE公式アカウント」を友だち登録している全国の男女642人を対象に、利用動向に関する実態調査結果をまとめたレポートを公開しています。下記よりダウンロードできます。ぜひご覧ください!
住民向け情報サービスから始めるDXとは
情報サービスには、自治体から住民への情報配信やサービス提供、受付業務、また、住民から自治体への道路や公園等の不具合通報やいじめやDVなどの相談、その他問い合わせがあります。
自治体DXによる効果は大きく分けると「住民サービスの向上」と「効率的な自治体運営」の二つです。
住民サービスの向上には、子育て相談、災害情報の配信、学校連絡網、ゴミ分別配信、公園・道路・街灯の不具合通報、夜間の問い合わせ対応、担当者不在時の対応などがあります。
効率的な自治体運営は、職員の働き方改革、問い合わせ業務負荷軽減、職員のメンタルケア、クレームへの対応、自部門対象外問い合わせ対応などです。
LINE公式アカウントを活用した住民サービスの事例
LINE公式アカウントを活用した住民サービスは、住民が欲しい情報のみ受け取れる情報配信や、道路や公園などの不具合通報、ゴミ分別の自動回答、いじめなどのチャット相談などがあります。
【福岡県福岡市】友だち数175万人。災害時の避難行動支援機能など様々な機能を搭載
福岡市LINE公式アカウントは、友だち数175万人(2021年1月現在)を超え、まさに福岡市と市民を繋ぐコミュニケーションインフラです。
LINEとチャットボットを連携し、自動応答でゴミ分別検索や道路等の不具合通報受付、災害時の避難行動支援など、様々な機能を搭載しています。さらに、市からのお知らせなど情報配信は、セグメント配信機能を活用し、市民が受け取りたい情報だけが届く仕組みです。
【神奈川県横浜市】道路の不具合通報サービス
横浜市LINE公式アカウントは、2021年5月から道路の不具合通報サービスやセグメント情報配信機能を搭載しています。
【大分県別府市】LINEを使った学校連絡網
別府市のLINE公式アカウントは、日英対応のゴミ分別自動回答や、セグメント情報配信サービスを搭載中です。
また、2021年4月からLINEによる学校連絡網サービスも使い始めました。別府市内の幼小中高の学校が、学年やクラス、部活単位で先生から保護者・生徒へ連絡やアンケートができるサービスです。
ボイスボット(音声自動応答)の活用
スマートフォンの浸透でLINEやWebでの情報収集をする人も増えていますが、電話での問い合わせは完全になくなることはありません。
コロナウイルスワクチン接種では、全国の自治体で電話が急増していると連日ニュースになっています。ワクチン接種の予約だけでなく問い合わせも多くあるそうです。
特定の問い合わせ電話が急増することで、同様の質問が都度かかってくるため、対応に時間がとられ通常業務が進まない。電話が繋がらないと関係のない部署に入電が起こる。もちろん電話が繋がらず待たされ不安にさせてしまうこともあるでしょう。
急増する電話問い合わせに「ボイスボット」が活躍しています。ボイスボットは音声認識・音声合成技術を使い、音声の自動対応が可能なシステムです。
音声自動応答で電話での聞き取り、話した言葉を自動で書き起こしすることができます。従来のIVRシステムと違って、専門の知識がなくともWebの管理画面から簡単にシナリオ内容を変更・反映できるので、例えばワクチンの接種券発送前・発送後・接種開始以降などの時期ごとに、いつでもシナリオ内容を変更できるのです。
よくある質問の回答や電話混雑時の一次対応を自動化させることで、解決率の向上や電話が繋がらない・待たされる不安の解消、また、業務負担の軽減が期待できます。
【埼玉県川口市/コロナワクチン接種コールセンターで利用】
川口市では、コロナウイルスワクチン接種コールセンターでボイスボットを導入し、ワクチン接種に関する問い合わせへの自動回答を24時間行っています。営業時間内は希望する場合はオペレーターに繋ぐこともできます。また、スマートフォンの電話番号宛てに該当するWebサイトのURL情報の送信もしています。
【静岡県袋井市/デジタル推進キャンペーンで利用】
袋井市では、マイナンバーカード普及の「袋井デジタル推進キャンペーン」にて、問い合わせの自動応答に活用していました。Webサイトに掲載しているキャンペーンに関する情報を、希望する情報を音声で確認が可能です。営業時間内は担当する部署へ自動転送もできます。
部署を横断した取り組みのため、電話対応で取り次ぐのも時間がかかるものです。自動で転送できるため、職員の負荷軽減にも繋がります。
適切な導線へ誘導させるには?
自治体のWebサイトには多くの情報が掲載されています。せっかく情報は載っているのに、欲しい情報になかなかたどり着けず、とりあえず電話をする、ということもあるのではないでしょうか。
適切な箇所へ適切に誘導することで、電話の急増を防ぎ業務負担を減らすことができます。適切な導線へ誘導するには、ビジュアルIVRが効果的です。
【ビジュアルIVRとは】
ビジュアルIVRとは、電話で音声アナウンスに従って番号をプッシュして選択する IVR (Interactive Voice Response)をビジュアル化して、手で選択することで進行するイメージです。
電話番号の案内だけを表示するのではなく、様々な窓口を紹介し、電話以外の対応を望む方には別の方法を使ってもらうことで「サービスの向上」「呼量の削減」を実現できます。
お気軽にお問合せください。