昨年2022年秋にCS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である株式会社J.D. パワー ジャパンが『2022年カスタマーセンターサポート満足度調査SM<金融業界編>』という調査結果を発表し、それに関するプレスリリースを発表しました。
同プレスリリースによると、2022年の金融業界全体のカスタマーサポートの総合満足度は、前回調査を実施した2021年よりー12ポイントの低下となったそうです。本調査では「サポート機能別にみると、オペレータによる対応が必要な『コールセンター』と『オペレータによるチャットサポート(以下、「有人チャット」)』において低下が大きく、『有人チャット』は前年比-20ポイント、『コールセンター』は-17ポイントとなった」と解説しています。金融業界におけるコールセンターと有人チャットを中心とした満足度低下の理由には、電話や有人チャットなどの有人対応サポートの際の「待ち時間」が関係するようです。
Mobilus SupportTech Labで2022年春に行った<消費者のLINE公式アカウントの利用動向調査2022>でも、「回答まで待てる時間」は「5分未満」の回答が最も多い結果でした。
Mobilus SupportTech Labの調査はLINE上でのチャットサポートによるものですが、webで有人チャットや電話でのサポートも含めて、「有人対応はすぐに解決してもらえる」と思われることが多いのではないでしょうか。そして、有人対応を希望する人が多ければ、実際の有人対応窓口への問い合わせは集中し、どうしても「待ち時間」は長くなってしまいます。
過去の問い合わせデータを把握し、需要を予測したうえでオペレータリソースを最適化する
これはワークフォースマネジメント、つまり『人的資産(労働力)管理』と呼ばれる考え方になります。そのためのツールは複数ありますが、最も大切なことは『人的資産の最適化』という考え方です。過去の問い合わせ数や各コンタクトリーズンのデータを元に、想定問い合わせ数(呼量総数)や、最適な人員数と配置を予測して割り出し、またそれらの予測データを元に時間帯や問い合わせ内容、対応スキルに応じたオペレータのシフト調整、シフト管理をすること(=『最適化』)することで、問い合わせをしてきたお客さまを「待たせない」ことにつながります。
(ワークフォースマネジメントに関する詳しい内容は、こちらの過去記事をご覧ください)
スマートルーティングという考え方
「すぐに解決したい=有人対応で問い合わせ」となってしまうと、有人対応チャネルへの呼量が増加してしまいますが、場合によってはボットの方が早くつながり解決できる場合もありますし、FAQの内容が充実していればそこで自己解決に至る場合もあるでしょう。ではお客さまはその時々で最適なサポートチャネルを選ぶことができるのでしょうか?大切なのは「”選んでもらう”から“誘導する”という考え方=スマートルーティング」という考え方です。
スマートルーティングは、まずはweb上で問い合わせ導線入口を作るイメージです。
たとえば、緊急性は少ないもののユーザー側の確認項目を必要とする問い合わせは、オペレータチャットなどノンボイス有人対応へ誘導します。このとき、病院やレストランのようにチャット待ち人数がトーク画面に表示できれば、お客さまの「待たされた感」も軽減することができるでしょう。スマートルーティングのためには各問い合わせのチャネル毎に対応できる/できないの判断と事前の設計が必要になるため、ここでもやはり各コンタクトリーズンの分析が重要になってきます。
有人対応を補うためのハイブリッド対応や自動化も
今回問題となっていた有人対応のリソースを補うためには、ボット対応とシームレスに対応できるサポート体制を構築して、有人対応時間のAHTを削減することも大切です。ボリュームが多い定型型の手続きは、システム連携をして自動受付のみで手続き完了まで導くことができるでしょう。また定型型の手続きは、チャットボットで一次対応(プリヒアリング)を行い担当者が折り返し対応を行うようにすると、顧客の状況を予め把握したうえで対応できるため、スムーズな問題解決が可能です(その結果、対応工数が削減でき、センターの人的リソースを節約できるというメリットにもつながります)。電話や有人チャットで対応が開始された後でも、たとえば本人確認プロセスなど定型業務の自動対応を間に挟んでAHTを削減することができるかもしれません。
一方、緊急性が高い問い合わせ内容は、「待たせられる」ことによって顧客からの評価が下がりやすいため、これまで通り直ぐに電話番号へ繋がるようにします。また突発的に増えた問い合わせは、臨時FAQを最上位に表示して見つけやすくして誘導するなども有効な手段です。
問い合わせをするお客さまの目的は、「有人対応によるサポートをうけること」ではなく「スムーズに問題解決ができること」です。上記のようなポイントをふまえることで有人対応チャネルのみへの呼量削減につなげ「待たせない」を実現することも可能です。
2023年2月現在、コールセンター業界においてはオペレータ人材不足が深刻化しており、本リサーチで明らかになったマイナスのポイントを有人チャネル・コールセンターでの「人員増加」でカバーするには限界があるでしょう。本コラムで触れた「ワークフォースマネジメント」「スマートルーティング」「ハイブリッド対応や自動化」の考え方をとりいれた顧客対応の改善をおすすめします。
今回ご紹介した【J.D. パワー 2022年コンタクトセンターサポート満足度調査SM<金融業界編>】のプレスリリースは、こちらのリンクよりご覧いただけます。
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