カスタマーハラスメント(カスハラ)の問題は、お客さまの声を直接受けるコンタクトセンター(コールセンター)でも深刻な課題です。コンタクトセンターに寄せられる電話は、商品・サービスへの疑問やクレームの場合も多く、電話越しだと強い口調でクレームを受けることもあり、オペレーターの負荷が高く離職率が高い原因にもなっています。

カスハラはなぜ起きてしまうのか。CX-Branding Tech. Labでは、コンタクトセンターをはじめとしたお客さま窓口の利用動向を明らかにすることで、カスハラにつながる背景や解決方法を探り、消費者と企業のコミュニケーションの在り方を考える目的で調査を行いました。2019年に初めて実施し、今年で5回目の調査です。当記事では調査結果を紹介します。

調査概要

調査名:お客さま窓口の利用実態調査2024

調査方法:インターネット調査

調査期間:2024年8月14日~8月15日

調査対象:全国の15歳~70歳以上の男女729名

調査方法:Fastask(株式会社ジャストシステム提供)でインターネットアンケート調査を実施

有効回答数:729サンプル

調査企画:CX-Branding Tech. Lab(モビルス株式会社)

※事前調査(15歳~70歳以上の男女6,173名を対象)で、「あなたは、商品やサービスについて、疑問点などを企業に問い合わせをしたことがありますか?」の質問に「ある」と回答した人を対象に本調査を行いました。

調査の結果(一部抜粋)

(1)お客さま窓口への問い合わせ手段として6割以上が電話以外のノンボイスを利用、60代・70代以上の高齢層も電話利用は半数以下に

従来はお客さま窓口への問い合わせ手段は電話が主流でしたが、現在は4割にとどまり、問い合わせフォームやメール、チャットなどの電話以外の手段が6割を占めている実態が明らかになりました。

[図1-1]
[図1-2]

お客さま窓口に問い合わせをする際に最もよく使う手段を聞いたところ、全体では「問い合わせフォーム(31.6%)」「メール(13.3%)」「チャット(14%)」「DM(2.2%)」となり、6割以上(61.1%)の方が電話以外のノンボイスを利用しており、ノンボイスでの問い合わせが浸透していることが伺えます[図1-1]。

年代別にみると、若年層の問い合わせ手段は分散傾向にあります。若年層での電話離れはやはり進んでいますが、意外にも60代、70歳以上も、電話は半数以下でした。2023年の調査では、70歳以上は電話が半数以上(55%)を占めていましたが、今回は43.8%と10%以上減少しました[図1-2]。

(2)不満トップは「つながらない・待たされる」、約6割が購入や利用に影響した経験有、うち5割以上が対応に不満で購入・利用をやめた経験有

窓口への不満は「つながらない・待たされる」が4割で最多でした。また、窓口の対応に不満があり商品やサービスの購入・利用をやめたことがある人は5割を超え、窓口対応の重要性がうかがえます。

[図2-1]

お客さま窓口に問い合わせをした際に不満に思ったことを聞いたところ、全体では、「つながらない・待たされる」(40.9%)が最多で、「通話料・通信料がかかる」(35.9%)「問い合わせ方法・問い合わせ先がわかりにくい」(31.8%)が続きました[図2-1]。

[図2-2]

お客さま窓口の対応によって、その企業の商品やサービスの購入や利用に影響したことがある人は約6割に上りました。影響したことがあると回答した430名に具体的な内容を聞くと、「対応に不満があり、その企業の商品やサービスの購入・利用をやめた(52.8%)」が最多で2人に1人以上に上りました。「対応に満足し、その企業の商品やサービスの購入・利用を継続している(37.0%)」と回答した人は約4割でした[図2-2]。

(3)7割以上がチャットでの問い合わせ経験があり、高齢層も6割以上で昨年から1割強増加。一方、AIに苛立つ声も有り

電話以外の問い合わせ手段が主流となる中、チャットを利用したことがある人は7割で、60代・70代以上においても6割と全年代で普及している実態が明らかになりました。手軽さやすぐに回答がもらえることを理由にチャット利用が普及する一方で、「回答が的を射ていない」「返信が遅い」といった不満も寄せられました。

[図3-1]

チャットで問い合わせをしたことがあるか聞いたところ、全体では7割以上(71.7%)に経験があることがわかりました。前回調査から3.7%増加しました。年代別にみると、若年層の利用経験が高いですが、60代(68.5%)、70歳以上(64.1%)と高齢層も6割以上に上りました。2023年の調査と比較すると、60代(57%→68.5%)、70歳以上(48%→64.1%)では、チャットでの問い合わせ経験者が10%以上増加し全年代で普及しはじめていることがうかがえます[図3-1]。

[図3-3]
[図3-4]

お客さま窓口への問い合わせ手段としてチャットを利用したいと思う理由を聞いたところ、「時間や場所を選ばない」「他のことをしながら問い合わせができる」など、時間や場所を気にせず自分の都合に合わせて問い合わせできることや、「電話やメールと比べて待たされず、解決が早い」「写真も簡単に送れる」「文章にした方が伝えやすい」「文字の履歴が残る」など、解決の速さやテキストコミュニケーションならでの利点や、「緊張しない」「気を遣わなくて良い」「人と話さなくて良いのが楽」など、心理的ストレスが軽減されるといった声が寄せられました。「今はチャットで解決できる範囲は狭いけど、これから進化していくと思う」と、今後への期待の声も見られました[図3-3]。

一方で、「AIは回答が的を射ていないことが多い」「有人チャットだと良いがAIだと対応範囲も狭くてストレス」「解決せずオペレーターに直接問い合わせた。二度手間になった」など、回答精度の低さや、対応範囲の狭さ、解決せず手間が増えたという声や、「便利だが返事を待つ時間を含めると時間がかかる」「すぐに返信が欲しいのに時間がかかりすぎる」「十分対応できる体制になっていない」といった、返信の遅さや解決までに時間がかかることへの不満の声が多く寄せられました。また、「入力が面倒」「文章で説明するのが苦手」など、テキスト入力の手間や対応範囲に関する声も挙がっていました[図3-4]。

調査結果の考察

本調査の結果から、お客さま窓口に対して「つながらない・待たされる」ことを不満に感じる人が最多で、4割以上に上ることがわかりました。電話がつながらないことへの対策として、企業ではチャットなど他の問い合わせ手段を増やす動きも広まっており、お客さま窓口へ問い合わせする際に電話ではなくノンボイス(チャットやメールなど)を最もよく使う人が6割以上に上ることがわかりました。チャットでの問い合わせ経験も7割以上と年々増加しており、60代・70歳以上の高齢層も6割以上と大幅に増加しました。

一方で、「AIは回答が的を射ていない」「チャットで解決せずオペレーターに問い合わせて二度手間になった」「チャットの返信が遅い」など不満の声も挙がっています。企業はチャットボットと有人チャットを組み合わせたチャットサポートや、生成AIを活用した自動化や業務効率化などで、つながらない・待たされる課題の解消を行い、人ならではの役割に集中できる運用が求められています。こうした対策を通して、カスハラ防止につながっていくことが期待できます。

また、お客さま窓口の対応は、商品購入や利用継続に直結することも明らかになりました。企業にとって、お客さま窓口の利便性を向上することは、カスハラ防止に役立つことはもちろん、企業のブランドイメージや収益向上においても重要な取り組みとして位置づけていくことが必要だと言えます。

調査レポートのダウンロード

記事で紹介した「お客さま窓口の利用実態調査 2024」の調査レポート全文を、下記よりダウンロードできます。ぜひご覧ください。