コールセンター(コンタクトセンター)では、電話やメールだけでなくチャットボットや有人チャットといったチャットサポートの活用も増えています。一方で、「チャット窓口を開設したが全然利用されていない」「期待していたほど運用効率が上がらない」「応対品質にばらつきが出る」「運用体制の構築やオペレーターの育成・評価が難しい」などの悩みをよく耳にします。本記事では、チャットサポート導入時によくある課題と、効果を出すための構築・運用方法について、オペレーター支援機能や生成AIの可能性も併せて紹介します。

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チャットサポート導入時によくある4つの課題

チャットサポートは、電話やメールの代わりに、チャットボットやオペレーターによる有人チャットで顧客サポートを行う仕組みです。ボットのみ、オペレーターのみ、ボットとオペレーターが連携するハイブリッドの3種類があります。Web、LINEなどのチャネルを顧客ニーズや特性に応じて選択することで、高い導入効果が期待できます。

自動応答によって効率化を図るべくチャットボットの導入が先行して進んでいますが、効果を出すためには、チャットボット単体ではなく有人チャットとの連携も欠かせません。

一方で、有人チャット導入は人が関わる分、運用体制や育成、ナレッジの構築など導入時のハードルが高いと感じる企業が多いです。

チャットサポート導入時によくある課題は、大きく4つあります。

・ボリューム(流入が増えない)

・効率化(期待していたほど運用が効率化できない)

・応対品質(応対品質にばらつき・育成や評価が難しい)

・従業員満足(構築・運用体制により負荷が増える)

これらの主な課題を解決し、効果的なチャットサポート運用を実現するための具体策を紹介していきます。


効果の出るチャットサポートの運用体制・育成・評価

チャットサポートの導入時、最初にぶつかる壁は、「チャット対応をするオペレーターの確保や育成・評価」「ナレッジやFAQの作成、KPIの設定など運用体制」です。運用体制の構築やオペレーターの育成・評価は、どのように行っていくと良いでしょうか。

定型文の活用で応対品質を保つ

チャット活用のメリットの一つが、定型文の活用がしやすい点です。定型文を活用することで、属人化を防ぎ標準化できるようになります。一方で、定型文の文章を送るだけでは無機質になるため、人肌を感じる対応が重要です。定型文を使うタイミングを考え、機械的な対応にならないようにします。顧客体験の革新を掲げチャットサポートを活用するネット保険会社では、電話対応のオペレーターを育成するトレーナーチームがチャット対応の育成も行うなど、各オペレーター任せにせず、センター全体で運用・育成を図ることで応対品質を保っています。

定型文機能のイメージ。タイプミスによる時間ロス削減や、誰が対応しても同じフレーズを表現できる、誤案内によるオペレーションリスクの軽減などにも有効。

応対履歴とアンケート評価を活用

フィードバックを取りやすいこともチャットのメリットです。例えば、【正しい回答+テンプレートの利用】だけでなく、無機質になっていないか、文章の長さが適切かなど、応対履歴を元に確認をし、評価基準を決めることができます。チャット対応の最後に顧客へアンケートを取ることも容易にできるため、応対履歴と顧客からのアンケートを照らし合わせた評価もしやすいです。

ナレッジとテキスト対応の経験を踏む

チャットボットや有人チャットを導入し、ノンボイス比率75%を実現するネット銀行では、有人チャット対応の育成として、「電話⇒メール⇒有人チャット」の順でプロセスを踏む育成方法を採用しています。有人チャット対応は、電話対応でのナレッジ構築とメール対応でのテキスト対応両方を経験したオペレーターが担当することで、ナレッジとテキスト両方の応対品質を兼ね備えることができるのです。


チャットサポートへの流入数を確保する導線設計と役割分担

チャットサポートを導入したは良いが上手くいかないとき、ぶつかる課題が「流入数が増えない」「期待していたほど効率化しない」「応対品質が低い」「従業員の負担が高い」です。まずは使ってもらえないと、上手くいっているかどうか判断ができません。最初は、いかに流入数を増やすかが重要です。

流入数の増加を考える際に欠かせないのが、導線設計です。チャットを使ってもらうための導線を作れるかどうかにかかっています。

チャットサポートがメイン窓口になる導線を作る

チャットサポートへの導線をいかに設計するか。まず、チャットサポートにつながる導線を作ることです。

例えば、ノンボイス比率75%を実現するネット銀行では、自社開発したアプリで口座内容の確認や入出金などすべてのサービスを利用できます。アプリを起動すると「チャットでお問い合わせ」ボタンが出てくる仕様です。何か知りたいことがある際に電話をすることなく、自然とチャットを選ぶ導線を提供しています。チャットサポートがメインの入口になるため、自ずと流入が増える仕組みです。

安易に電話窓口を案内しない

チャットサポートに流入を増やしたいと思いながら、お問い合わせページを開くと電話番号が大きく表示されているケースが見られます。電話を前面に押し出しながらでは、チャットサポートの利用はなかなか増えません。

チャットサポートをメイン窓口にする意思を持つことが大切です。ただし、電話番号を隠すなど、やりすぎると電話応対が必要なときにつながらず顧客の利便性を損ねる結果になるため、電話は緊急用として機能できるようにするなど、バランスを考えながらメインの導線としてチャットを置きます。

チャットボットと有人チャットの役割を明確化

チャットサポートへの導線を考える際、チャットボットと有人チャットの役割を明確化して、問い合わせ内容に応じた最適なチャネルへ誘導できる導線をつくることも必要です。

チャットボット

チャットボットは人の代わりにシステムが質問に対して回答をする方法です。これにより、24時間365日顧客対応が可能となります。

有人チャット

有人チャットは、オペレーターがリアルタイムで顧客の疑問や問題に対応します。オペレーターによる柔軟な対応が可能で、個別のニーズに適したサポートを提供します。有人で対応をするため、顧客満足度が高い傾向にあります。

チャットボットと有人チャットの併用により、チャットボットで対応できなかった問い合わせをオペレーターが有人チャットで対応したり、事前ヒアリングや定型的な手続きなどをチャットボットが自動応答したりできるほか、それ以外を有人チャット対応するといった柔軟な対応が可能となります。

顧客満足度と業務効率化を両立させることが可能で、単純な質問にはボットが即座に回答し、複雑な問い合わせや個別対応が必要な問い合わせの場合にはオペレーターが担当します。チャットボットからオペレーターへの切り替えがいかにスムーズに移行できるかが重要です。


支援機能と生成AIによる有人チャット運用の効率化

チャットサポート導入に期待されることの一つに「運用効率の高さ」があります。しかし、最初から運用効率が高いわけではありません。有人チャット運用を効率化させるために、どのような打ち手があるでしょうか。

オペレーター支援機能の活用

有人チャットを運用するチャットシステムには、さまざまなオペレーター支援機能が搭載されています。支援機能を活用することで運用効率を高めることができます。どのような支援機能が有効か紹介します。

複数同時対応を可能にする支援機能

運用効率を上げるには、一対一の対応ではなく複数同時対応ができることが必要です。複数同時対応を支援する機能として「問い合わせ一覧表示」や「入力透過機能」があります。

「問い合わせ一覧表示」から、顧客が有人チャットにたどり着くまでのチャットボットでの応対履歴や、問い合わせ内容を事前に把握できるため、同時対応できる内容か、一対一の対応が良いか、オペレータースキルはどの程度必要かなど、事前に判断することができます。

「入力透過機能」は、顧客が送信する前のテキストがオペレーターから見えるため、回答テンプレート選択や顧客特定などを先に準備することができ、複数同時対応をサポートします。

問い合わせ一覧のイメージ。経過時間や流入前のログ参照ができるため、待ち時間が長い顧客からの対応や問い合わせ内容などを確認し事前準備が可能になるほか、緊急性の高い問い合わせを優先対応するといったことができるようになります。
入力透過機能のイメージ。顧客が送信する前のテキストがオペレーターから見えるため、回答テンプレート選択や顧客特定などを先に準備することができます。

オペレーターのスキルを活かした対応ができる機能

前出の「定型文の活用」も運用効率を高めつつ応対品質を維持することに有効です。SV(スーパーバイザー)など管理者が、問い合わせ内容を元に、オペレーターごとのスキルに適した問い合わせを割り当てたり、オペレーターが対応しきれない問い合わせをSVが引き継いだり、問い合わせ対応の引き継ぎがスムーズにできる点もチャットサポートならではです。

生成AIがもたらす運用効率化の可能性

最後に、生成AIがもたらす運用効率化の可能性について考えていきましょう。生成AIの登場は、コールセンター領域に大きな影響を与えると言われています。実用化において、費用対効果が特に高いのは、有人チャットの対応中、後処理業務、そして管理業務への活用です。

回答サジェストを活用した対応中の回答作成支援

有人チャットの対応中にリアルタイムで生成AIが回答サジェストを作成することで、オペレーターは、人肌を感じる対応に集中できるようになります。最適な回答を導きやすく、顧客のメリットにも直接つながります。

要約機能による後処理業務の負荷軽減

要約機能は生成AIの得意分野です。有人チャット対応終了後に、問い合わせ内容を登録する業務はオペレーターにとって負荷の高いものです。また各オペレーターによる品質のばらつきもあるため、生成AIによる要約を活用することにより、後処理時間を大幅に短縮すると同時に応対内容の登録を均質化することができます。

カテゴリ別評価抽出による品質改善で管理業務を効率化

生成AIのプロンプトを上手くチューニングし活用することによって、チャット対応の満足度評価や応対改善点を抽出することも可能になります。これにより、品質改善に即時に活用することができるようになり管理業務の効率化にも貢献します。

上記で活用方法の一部をご紹介しましたが、チャットオペレーションにおける生成AIの活用は日々進化しています。今後ますます活用の幅が広がれば飛躍的な業務効率化につながるでしょう。

まとめ

本記事では、チャットサポート導入時によくある課題と、効果的なチャットサポートを実現する構築や運用の仕方について、オペレーター支援機能や生成AIの可能性も併せて紹介しました。導入時の構築・運用のポイントを抑えることで、効果的なチャットサポートを提供していきましょう。

有人チャットサポートは、様々な支援機能を活用することでオペレーターの負担軽減・業務効率化に効果的です。

チャットツールを検討する際は、搭載されている支援機能の内容や使いやすさを比較することをおすすめします。

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