Mobilus SupportTech Labでは、
「SupportTech」業界の現在地を見える化することを目的に、国内で展開する関連サービスを分類した「SupportTechカオスマップVer.1(2020.12)」 を発表しました。

本記事では、Mobilus SupportTech Lab所長 石井による、「SupportTechカオスマップ」の解説として、顧客サポートの技術トレンドについて紹介します。

チャットボット技術トレンドの変化

チャットボット普及の初期は、人間がルールを作る「ルールベース型一問一答ボット」と、ディープラーニングなどによる機会学習によって自らデータを学習し推定を行う「AI型一問一答ボット」が並行していました。ルールベース型は大変な手間がかかるためAI型(機械学習型)主流になりましたが、AIの対話技術は画像認識や音声認識のAI技術と比べ、まだ技術水準は高くありません。

そのため、回答精度を上げるために聞き返し機能や、シナリオ型ボットという補完的なボットとの組み合わせ、複数機能を効率的に制御するための管理機能が拡充されていきました。現在は多くのチャットボットでAI型とシナリオ型が併用されています。また、チャットが満足に応えられないときの回避策として、有人対応連携も導入されてきました。

領域ごとに大きく異なるAI技術の進捗度合いの表
領域ごとに大きく異なるAI技術の進捗度合い

2018年頃から新しいNLP(自然言語処理)フレームワークが出てきており、2019年、2020年とすさまじい進化がNLPの領域で生まれてきています。それまで画像領域に集中していたエンジニアリングリソースが次はNLPだということで取り組みが強化されたためともいわれています。

成果はアカデミックな領域に限定されており、まだ実用レベルには至っていない状況ですが、それほど遠くない時期に商用普及も始まるのではないでしょうか。これまでチャットボットはいわゆるFAQの回答にその用途が限定されてきました。

しかし、少し先の未来には「書面で規定されている内容」に関しては、その解答能力が人間を超えることになり、サポートにおける人の果たす役割は大きく変わっていくと考えています。

LINEを始めとしたメッセージングアプリの台頭

これまでWebサイト上のチャットが主流でしたが、LINEやFacebook Messengerなどメッセージングアプリの普及により、非同期コミュニケーションが成立するようになってきました。Webサイト上のチャットの場合、ユーザーは匿名でやりとりをするため一度離脱すると終わっていまいます。

一方、LINEは、一度問い合わせがあると常に企業とユーザーの繋がりが維持されます。過去のやりとりの確認ができることや、企業側から情報配信をするなど、顧客サポートをしやすく付加価値も出しやすいことが特徴です。問い合わせ窓口のインターフェースとして、LINEなどメッセージングアプリの活用が広まっています。

ミニアプリなどLINEで利用できるインターフェースも増えてきており、テキスト(チャット)と音声(通話)の垣根もなくなるような仕組みも導入されています。また、インターフェースとしてのLINEアプリの後ろにOCR(画像認識)や生体情報認識などの技術も組み合わされることで、その用途も拡大していくことと考えます。

音声認識技術の進化

音声認識技術の進化にともない、ボイスボットと呼ばれる電話自動応答システムを、顧客サポートの窓口で利用する事例が増えています。自動でヒアリングした内容は自動でテキスト化され、それをもとに必要に応じて二次対応を行うため、電話対応時間の削減にも繋がっています。また、音声認識技術の進化により、VOC(お客さまの声)分析への活用も始まってきました。

音声認識技術は画像認識と並んでDeep Learningの恩恵を受けやすい領域といわれており、その精度は日々進化していると実感しています。今後の課題は日本語ならではの問題や、利用ユーザー固有の専門用語などの認識への対応であると考えています。

このようなテクノロジーの進化により、「電話がつながらない、待たされる」といったユーザーの不満を解消すべく、問い合わせ手段や対応時間の多様化などが進んでいます。一方で、問い合わせ手段が複数あり導線が複雑になることでユーザーが迷わないよう、導線設計を簡単に構築できる「ビジュアルIVR」の活用も盛んになってきています。

技術的には新しいものではありませんが、適切な問い合わせ窓口に誘導し、自己解決の促進や迅速な解決を実現するべく、導線設計の見直しとして活用する事例が増えています。

参考

テクノロジーによる顧客サポートの変革を目指す、国内初の研究開発組織 「Mobilus SupportTech Lab」を新設
第一弾として「SupportTechカオスマップ」を公開

~AIと人の連携による人手不足解消や顧客体験の向上を啓発~

https://mobilus.co.jp/press-release/24252

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