コールセンター(コンタクトセンター)へ寄せられる不満の声として多いのが、「つながらない・待たされる」です。入電が集中した際に電話が取り切れないことや、窓口違いによる取り次ぎ対応といった課題を解決し、業務効率化や顧客満足度を向上する手段として、IVR(電話応答システム)の導入を検討している方は多いのではないでしょうか。当記事では、IVRの基本的な仕組みを始め、導入時のメリット・デメリットや活用例、導入時の注意点について解説します。IVR導入の際に参考にしていただけますと幸いです。

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IVR(自動音声応答システム)とは?

IVR(Interactive Voice Response)とは、電話対応を自動化するシステムで、音声ガイダンスを通じて顧客が入力したものに応じて回答を行う仕組みです。 顧客が電話のプッシュボタンを使用して選択肢を入力すると、内容に基づいて適切な部門やサービスに自動で接続します。

IVRは、顧客対応の効率化や、オペレーターの負担軽減に貢献するため、多くの企業で導入されています。電話対応を自動化することで、営業時間外の対応や、待ち時間の短縮に効果的です。顧客はオペレーターと話さずに必要な情報を即座に得ることができるため、迅速な対応が求められる現代の顧客ニーズに適していると言えます。

IVR(自動音声応答システム)の歴史と背景

IVRは1970年代に登場し、当初は大手企業が高額な設備を導入して使うシステムでした。 1990年代から技術の進歩と共に導入コストが下がり、中小企業やコールセンターに導入されるようになりました。2000年代に入るとインターネットの普及によりクラウド型IVRが登場し、コストパフォーマンスが向上し、IVRはさらに広まっていきました。

コールセンターは離職率の高さや採用難による慢性的な人手不足の課題を抱えています。電話がつながらない・待たされるといった顧客の不満につながることや、オペレーターの負荷が高くなることも問題です。こうした課題に対し、IVRは顧客の利便性向上と企業の業務効率化を目的に発展してきました。

現代では、AI技術を活用した音声認識システムと連携し、より高度な自動応答が可能になっています。また、音声だけでなくWebサイトやスマートフォンの画面上に案内メニューを表示するビジュアルIVRも登場し、システムは時代と共に進化し続けています。

IVRの仕組み

IVRは、 電話を受信すると音声ガイダンスが流れ、顧客の入力に基づいてアクションを取る仕組みです。 顧客がプッシュボタンを使用してメニューを選択すると、希望する部署やサービスに接続します。IVRを使う標準的な流れは以下です。

①顧客がコールセンターに電話をかける

②音声ガイダンスが流れる

③該当する番号をプッシュボタンで入力

④IVRが適切な担当窓口へ転送・簡単な質問への回答の提供などを行う

IVRの種類

IVRの種類は「オンプレミス型」「クラウド型」「ビジュアルIVR」の3つです。また、ボイスボット(AI電話自動応答システム)との違いについても紹介します。

オンプレミス型IVR

オンプレミス型は、自社のサーバー環境に専用の装置を設置しシステムを構築する大規模なIVRです。自社で運用・管理を行うため、 セキュリティやカスタマイズ性に優れており、金融機関や大規模なコールセンターなど大企業で採用されてきました。一方で、必要な機器の調達や専用回線の設定工事費、インフラの維持・管理として、初期費用やメンテナンス費用が高いデメリットがあります。

クラウド型IVR

クラウド型は、インターネット(クラウド)上に構築されたシステムを利用する運用方法です。 インターネットの接続環境があればどこからでもアクセスでき、自社環境の構築や機器の用意が不要なため、初期導入コストを低く抑えられます。そのため、中小企業やコールセンターで主に使われています。導入までがスムーズに進むため、迅速なコールセンターの立ち上げに最適です。

ビジュアルIVR

ビジュアルIVRは、スマートフォンのアプリやパソコンのWebサイトなどの画面上で視覚的に操作できる仕組みです。顧客からの電話にSMSでURLを送信し、ビジュアルIVRを設置したサイトに案内します。

IVRは、アナウンスを最後まで聞かないと先に進めなかったり、聞き逃すと最初から聞き直す必要があったりと顧客はストレスに感じることもあります。一方ビジュアルIVRは、メニューを視覚的に確認し選ぶことができるため、ユーザー体験を向上できると言えます。

また、チャットボットや有人チャット、FAQへの誘導もしやすく、 複雑な問い合わせや予約手続きにも有効です。

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ボイスボットとの違い

IVRと似たシステムとして、ボイスボットがあります。ボイスボットは、人工知能(AI)を搭載した音声自動応答システムです。顧客がガイダンスを聞いて該当するプッシュボタンを押すとあらかじめ録音してある音声が自動再生されるIVRと違い、ボイスボットは顧客が発話した内容に応じて最適なシナリオで会話が進行します。

ボイスボットについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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IVR(自動音声応答システム)で何ができる?活用シーンとは?

IVRには、担当窓口への振り分けや音声ガイダンスによる自動応答を始め、さまざまな機能があります。IVRでできることは何か、活用シーンも合わせてご紹介します。

音声ガイダンスによる自動応対でよくある質問へ回答

想定される質問に対する回答をあらかじめ録音しておくことで、音声ガイダンスが自動応答する機能です。オペレーターを介さず、簡単な問い合わせや情報提供をスムーズに行えます。

よくある質問への回答や、資料請求の案内などを自動で行うことができ、オペレーターの負担軽減につながります。また、混雑時や夜間などオペレーター不在時にも知りたい情報を得られるため、顧客の満足度向上も期待できます。

問い合わせ内容に応じて適切な窓口へ振り分け

顧客の問い合わせ内容に合わせて、適切な部署や担当者に自動で振り分けることができます。音声ガイダンスに沿って該当する番号を選択すると、あらかじめ割り振られている窓口に自動で転送される仕組みです。

顧客は複数回の転送でたらいまわしにされることなく、スムーズに問題解決することができ満足度の向上に効果的です。オペレーターにとっても、窓口間違いによる取り次ぎ対応の削減や、スキルに応じた振り分けが可能になることで負荷を軽減し業務効率化を期待できます。

さらに、CRMや過去の問い合わせ履歴と連携することで、パーソナライズされた対応が可能です。

番号への自動発信機能でキャンペーンやサービス情報を提供

 IVRから自動的に顧客へ発信できる機能もあります。 キャンペーンやプロモーションの情報を自動で発信し、ターゲット顧客に迅速に届けることができるため、営業活動の効率化を見込めます。また、支払い遅延者への督促や予約内容のリマインダーなど重要な通知の発信も可能です。 顧客が発信を受け取った後、必要に応じてオペレーターにつなぐこともできます。

折り返し電話の予約

 顧客が都合の良い時間帯に、折り返し電話を予約できる機能です。 混雑時などすぐにオペレーターにつながらなかったり、長時間待たされたりすると、顧客の不満が募り、見込み顧客を逃し機会損失にもなりかねません。折り返し予約ができると希望の時間に対応が受けられるため、待ち時間のストレスを軽減でき、顧客満足度の向上を期待できます。

 

IVR(自動音声応答システム)導入のメリット・デメリットとは?

IVRを導入することで、業務効率化や顧客満足度の向上といったメリットが得られます。一方、デメリットもあるので合わせて見ていきましょう。

 

メリット

業務効率化

自動応答によりオペレーターが不要な対応を減らし、より重要な業務に集中できるようになります。よくある問い合わせや簡単な質問は自動で対応できるため、顧客対応全体の効率が向上します。また、自動化によってオペレーターの手違いやミスを防ぎ、応対品質の向上にもつながります。

オペレーターのリソース削減

簡単な問い合わせや案内を自動化することで、オペレーターの負担を軽減できます。窓口間違いによる取り次ぎ対応や、顧客を長時間待たせた後での対応を減らせるため、業務負担の軽減はもちろん精神的な負荷の軽減にも効果的です。 離職率の低下や業務の質の向上も期待できます。

24時間365日対応が可能

営業時間外や休日の問い合わせにも自動応答で対応可能なため、これまで対応できなかった顧客に対しても常にサービスを提供できるようになります。 特に国際的な企業では、タイムゾーンに関係なく対応することも可能です。自動応答でよくある問い合わせへの回答や資料請求の案内を行うほか、営業再開後に迅速な対応が受けられるよう、折り返し予約の案内などに活用できます。

応答率の改善による顧客満足度の向上

IVRは常に稼働しており、オペレーターが対応できない時間帯でも応答できるため、顧客の待ち時間を減らします。簡単な問い合わせは自動で対応し、複雑な問い合わせはオペレーターが対応するといった振り分けをすることで、応答率の改善を期待できます。混雑時に電話がつながらない事態を避けやすく、オペレーターが対応できない「あふれ呼」の対策にも効果的です。そのため顧客は、つながらない・待たされる・たらい回しにされるといったストレスから解放され、満足度の向上につながります。

 

デメリット

初期費用や維持費などのコストがかかる

オンプレミス型のIVR導入には初期コストやランニングコストがかかります。定期的なメンテナンスやアップデートも費用や対応コストがかかるため、注意が必要です。

選択肢が多いと顧客のストレスになる

急いでいる場合には、IVRのガイダンスが長かったり選択肢が多すぎたりすると顧客のストレスになりかねません。一方、IVRのメニューが少なすぎると、顧客が適切な選択肢にたどり着けず、結局「その他」を選ぶ人が増えオペレーターの負荷が高くなる可能性もあります。

 

IVR(自動音声応答システム)導入時の注意点・ポイントとは?

IVRのメリット・デメリットを踏まえ、ここからは導入時の注意点を紹介します。

「オペレーターと話す」という選択肢を入れる

 顧客がオペレーターと話せる選択肢を残しておくことが重要です。 自動応答でスピーディーに問題を解決できると顧客満足度は向上しますが、人でないと解決できない場合や人の対応を望む顧客もいます。自動応答に加え、人のサポートへの移行をスムーズにすることで、顧客満足度を保つことができます。

選択肢や分岐を複雑にしすぎない

選択する番号のメニューや分岐が多すぎると、ガイダンスが長くなり顧客のストレスにつながり、顧客が迷ってしまうおそれがあります。分岐やメニューは複雑にせずシンプルな設計にすることが重要です。覚えやすくミスが起こりにくいよう、メニューは3〜5個程度に絞るのが良いでしょうか。顧客視点で検証し、わかりやすい設計を目指します。

定期的な見直しを行う

IVRは導入して終わりではなく、運用状況を分析してガイダンスやオペレーションの流れを改善していくことが大切です。商品やサービスの内容に変更があった際には、ガイダンスの内容に変更を加える必要があります。定期的に見直しを行い、常に最新の情報を提供できるようアップデートし、顧客ニーズや新しい商品に対応させていくことで、IVR導入の効果を最大化できるでしょう。

まとめ

IVR(電話応答システム)を導入することで、コールセンター(コンタクトセンター)の業務効率化やオペレーターの負荷軽減、顧客満足度の向上が期待できます。効果的な活用のためには、自動応答だけでなく人につながる導線を残すことや、シンプルな設計にすること、定期的にメンテナンスを行うことが重要です。IVR(電話応答システム)導入の際は、メリット・デメリットを把握し、自社が抱える課題や状況に適したシステムを選択していきましょう。

当記事を執筆するモビルスでは、自己解決を促すビジュアルIVRや、AIボイスボット、オペレーション支援AIなど、サポート業務の効率化や顧客満足度の向上まで実現するソリューションを開発提供しています。導入前の課題の明確化から導入後も収益を最大化するための支援まで総合的に提供しています。ぜひご相談ください。

 

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