生成AI活用と人材課題を乗り越える、2025年のコンタクトセンター戦略
投稿日:2025年3月25日 | 更新日:2025年3月24日

2025年1月21日、モビルス株式会社は「生成AI活用と人材課題を乗り越える、2025年のコンタクトセンター戦略」をテーマに、オンラインセミナーを開催しました。執行役員 パートナー&テクニカルセールスディビジョン長 新谷 宜彦が登壇し、2024年を市場動向の調査データや企業の取り組み事例をもとに振り返り、コンタクトセンター業界が直面する生成AIの可能性と人材不足の壁、これらの解決策としてモビルスの考える生成AIの活用や、人材確保に向けたITソリューションの導入について、2025年に向けた具体的な戦略を徹底解説しました。当記事では、セミナー内容を抜粋して紹介します。
登壇者

目次
- 1. 2024年のコンタクトセンター業界動向
- 1-1.コンタクトセンター市場全体はプラス成長へ回復
- 1-2.ニーズ・環境に合わせたビジネスモデル・フォーメンションの転換が必要
- 1-3.自動化、ノンボイスチャネルへのシフトを含むデジタルシフトは、待ったなしの状態
- 1-4.チャットボット(ボイスボット)活用拡大が堅調に推移
- 1-5.従来のAIは活用が普及・定着、生成AIの実活用は局所・限定的
- 2. 2025年の展望、生成AIはどこまで期待にこたえられるか?
- 2-1.コンタクトセンターにおける生成AI啓発期への転換
- 2-2.高精度な文字起こしと要約を含めた二次活用
- 2-3.次世代型ナレッジ検索を活用したオペレーター支援を実現
- 2-4.生成AI連携による手続き型ボットが高度化
- 2-5.生成AI×ボイスボットの活用が普及し
- 3. 生成AIがコンタクトセンターにもたらすインパクト
- 3-1.コンタクトセンター運営フローへの生成AI活用
- 3-2.生成AIによる自動対応の進化(プロアクティブ対応)
- 3-3.コンタクトセンターの役割はCX創出による経営貢献へ
- 3-4.コンタクトセンター市場のシームレス化が進む
1. 2024年のコンタクトセンター業界動向
2024年のコンタクトセンター業界動向を振り返ると、大きく四つのことが言えます。
一つ目は、マイナス成長だった2023年の「コロナリバウンド」を、ビジネスモデルの転換など工夫しながら乗り越えてきていることです。コンタクトセンター市場全体はプラス成長へ回復しています。引き続き緩やかに伸長していく予測ですが、ニーズや環境に合わせたビジネスモデルへの転換が必要です。
二つ目は、人手不足の慢性的な課題解消にデジタルシフトは必須である認識が広がっていることです。人手不足による人材争奪戦と物価高のダブルパンチにより、人件費は高騰。地域分散、正社員化、募集人員の多様化等によって対応するも、慢性的な人員不足は継続しています。自動化やノンボイスチャネルへのシフトを含むデジタルシフトは、待ったなしの状態です。
三つ目は、チャットボットやボイスボットの活用拡大が堅調に推移していることです。今後もトレンドは変わらないでしょう。従来型の汎用的な質問対応に加え、データベース連携による事務処理の自動完結型への活用領域の拡大が高成長を牽引しています。
四つ目は、従来型AIについては活用が普及・定着していますが、2023年に登場した生成AIは活用検討は進むものの、実活用は局所・限定的活用にとどまっていることです。
次に、データ等をもとに詳しく見ていきましょう。
1-1. コンタクトセンター市場全体はプラス成長へ回復

コンタクトセンター(業務委託+派遣)の市場推移を見ると、2023年は新型コロナによる影響のリバウンドで初めてマイナス成長へ陥りましたが、2024年は市場全体はプラス成長へ回復しています。2025年もなだらかに伸びていく予測です。
1-2. ニーズ・環境に合わせたビジネスモデル・フォーメーションの転換が必要

コンタクトセンターのビジネス動向について調査したデータによると、「チャット対応などデジタルチャネルの案件が増えている」「インサイドセールスなど、営業支援系の案件が増えている」「従来のCS(カスタマーサクセス)領域ではない、新しい領域を開拓している」「カスタマーサクセス(オンボーディング、アダプション、エクスパンションなど)関連の案件が増えている」といった結果が上位に挙がっています。
この結果から今後のコンタクトセンターは、人を集めて業務をこなす労働集約型ではなく、デジタル化はもちろん、インサイドセールスやカスタマーサクセスなど新たな領域も加えるなど、周辺業務も取り組む形でビジネスフォーメンションを転換しながら市場を伸ばしていく必要があることが伺えます。労働集約型一本では、市場を伸ばすことは難しいと言えるのではないでしょうか。
慢性的な人員不足は継続

続いて雇用環境について見ていきますが、人材雇用難を実感される方も多いのではないでしょうか。「コンタクトセンター銀座」と呼ばれる、札幌市・仙台市・福岡市・那覇市の求人件数と平均・最高・最低時給を比較したデータによると、2024年の最高時給は軒並み上昇していることがわかります。かなりの高水準でないとオペレーターを雇用できない現状が浮き彫りになっています。
1-3. 自動化、ノンボイスチャネルへのシフトを含むデジタルシフトは、待ったなしの状態

「今後実施予定の採用難に向けた施策」について聞いた調査では、「Webサイトへナビゲーションする、チャットボットを導入するなど、顧客に自己解決を促して呼量削減を図る方針」(43.4%)が最多でした。「既存スタッフが退職しないようにモチベーション管理に気を配る方針」(42.9%)が2番目に多く、こまで同様の採用に対する工夫を継続するとともに、Webへのナビゲーションやチャットボットの導入など自己解決促進に取り組み企業が約半数を占めていることが分かりました。
1-4. チャットボット(ボイスボット)活用拡大が堅調に推移

サービストレンドは、チャットボット(ボイスボット)の活用が、前年比143%の伸びで非常に拡大した年でした。2025年の予測も、140%近い伸びで顕著に推移していくことが伺えます。
データベース連携×事務処理完結型へ活用領域の拡大が高成長を後押し

「チャットボットで対応しているコンタクトリーズン」について聞いた調査では、「FAQ(よくある質問)に記載されている問い合わせ」(81/9%)が上位ですが、「住所変更や見積もり、請求書発行依頼(再発行依頼含む)」「パスワードやIDの変更」「配送先変更」「パスワードやIDの照会」「既存顧客からの注文」「新規顧客からの注文」を挙げている割合も4割近くいることがわかりました。チャットボット活用が伸びている背景には、FAQの回答や一次受け対応だけでなく、データベースとの連携による事務処理完結型にまで活用領域が広がっていることが要因として大きいと言えます。
1-5. 従来のAIは活用が普及・定着、生成AIの実活用は局所・限定的

続いて、AIの切り口で見ていきます。「従来型のAI活用」についての調査結果によると、「AI対応の音声認識IVR(自動音声応答機能)」「FAQ検索などのオペレーター支援」「VOC(お客さまの声)分析などで活用」といった顧客対応やオペレーター支援、VOCヘの活用を筆頭に、普及・定着していることが伺えます。

一方、「生成AIのコールセンターでの活用」については、「すでに活用している」は18.9%でした。肌感覚としては実際にはここまでも多くはないのでという印象ですが、活用検討は進むものの、実活用は局所・限定的活用にとどまり、導入が進まなかったことが伺えます。
2. 2025年の展望、生成AIはどこまで期待にこたえられるか?
続いて、2025年のコンタクトセンター業界の展望について、「生成AIはどこまで期待に応えられるか?」を基軸に考えると、次の四つのことが言えます。
・コンタクトセンター領域における生成AI活用はブレイクスルー寸前、POCから本格活用へ進んでいく。
・実活用はTranscription(文字おこし)から始まり、要約やVOCなど二次活用が先行して進み、検索への活用も。
・次世代型ナレッジ検索を活用したオペレーター支援を実現。
・生成AI×Bot(ボイスボット)の活用も普及し、汎用質問回答・部分対応自動化・事務処理連携活用が推進。
調査データや実際のサービス内容を交えながら、詳しく解説していきます。
生成AIの登場で第4次AIブームの到来か

これまでのAIの進化を見ていきます。1950年代の簡易ゲームを主とした第1次AIブームから始まり、1980年代のパソコン検索エンジンが台頭した第2次AIブーム、2000年の音声認識・テキストマイニングが出てきた第3次AIブームと続きました。そして、2023年からは、生成AI登場により第4次AIブームと言われています。
2-1. コンタクトセンターにおける生成AI啓発期への転換
2023年、ChatGPIの登場によりコンタクトセンター市場でも生成AIへの興味・関心が高まり、POCが活発に行われました。しかし、セキュリティリスクや技術的制約、コストパフォーマンスなどの要因から「思ったより使えない」という風潮が広がり、市場は下火になり幻滅期へ。
では、今後はどうなるでしょうか。ここから啓発期に突入し普及が広まるか、衰退期に入ってしまうかどちらかです。コンタクトセンターに特化すると、間違いなく啓発期に入っていくと考えています。

2025年1月時点のコンタクトセンターにおける生成AIの立ち位置は、幻滅期から啓発期に変わるタイミングとして、ちょうど変化の線上にいると言えます。
今後、啓発期に入ると考える背景は主に三つあります。
一つ目は、社会環境です。人手不足が深刻化しているので生産性向上は必須の課題であり、生成AIの活用が期待されています。
二つ目は、コンタクトセンターの役割の変化です。これまでの「来たものに対応する」概念から、「CX(顧客体験)の向上」への意識が定着していることに伴い、役割拡大が求められています。
三つ目、生成AIへの意識変化です。生成AIの技術進化が目覚ましく、ChatGPTしかなかったLLMを各社揃えてきていることや、データセンターの拡張など、技術進化は必ずプラスに働きます。生成AI活用のメインターゲットはCX領域になり、企業のDX戦略が見直され、コンタクトセンターの改革が進んでくると考えています。さらに、2023年から2024年にかけて、実運用に活用できるサービス・プロダクトが登場していることも後押しになるでしょう。昨年末の「コールセンターCRM デモ&コンフェレンス in東京」でも、各社のブースやセミナーが生成AI一色だったことからも、進化の目覚ましさを実感しています。
生成AIソリューションを導入・検討の理由
生成AIの本格的な活用がされていく際には、コンタクトセンターのどのような領域から始まるでしょうか。「生成AIを導入あるいは検討している理由」を聞いた調査では、「人手不足解消のため顧客対応を自動化あるいはオペレーター対応の生産性を上げたい」(77.4%)が群を抜いてトップでした。
生成AIの活用成果で期待したい点
「生成AIの活用成果で期待したい点」を聞いた調査でも、「オペレーターの入力作業など後処理業務の効率化」がトップでした。生産性向上につながる、オペレーター業務の効率化に役立つ生成AIを活用したソリューションが求められていることが伺えます。
2-2. 高精度な文字起こしと要約を含めた二次活用
ここで、モビルスが提供するコンタクトセンター運用の応対品質と業務効率を飛躍的に改善するオペレーション支援AI「MooA®(ムーア)」を紹介します(※セミナーではデモをご覧いただきました)。
▽サービス紹介ページ
▽2分でわかるMooA紹介動画
顧客との通話音声を自動でテキスト化し、応対内容の要約を含め目的に応じて二次活用が可能なサービスです。応対内容をリアルタイムでテキスト化でき、手直しがほぼ必要ないほど高精度です。また、応対の途中で顧客から質問があった際に、テキスト化された会話内容をコピーし、MooAの画面上で検索すると回答を自動生成することもできます。応対内容の要約の生成は、終話後、5~10秒ほどで完了します。

音声認識の精度がなぜ高いか、疑問に思われている方もいらっしゃるかと思います。音声認識の仕組みについて、センテンス音声認識と文脈音声認識の違いから見ていきましょう。これまでの音声認識は、センテンス認識で行っていました。センテンス認識は、無音になったタイミングでそれまでの音声データをテキスト化する仕組みです。一方、「MooA」で使用する文脈音声認識は、一つの文脈で捉え意味を探りながらテキストを起こします。
文脈を理解した上で変換するため、誤変換が少なくなるのです。「えー」「あのー」などフィラーの除去や、数字やアルファベットの特性認識、会話が重なっても多重認識できる処理を組み合わせることで、高度な音声認識を実現しています。
多彩なプロンプトによる二次活用のバリエーション
「MooA」では、テキスト化した応対内容を応対中・応対後の対応業務に分けて、プロンプトに応じて二次活用できます。例えば、「FAQドラフトの自動作成」や「カスハラチェック」など、コンタクトセンター業務に必要な二次活用に対応できるプロンプトを用意しています。
2-3. 次世代型ナレッジ検索を活用したオペレーター支援を実現
「MooA」のナレッジ検索は、生成AI×RAG※式検索×構造化ナレッジの組み合わせによるハイレベルな回答精度を実現しています。RAGによるナレッジ検索は、2025年以降、主流になっていくでしょう。
検索精度は今後上がっていきますが、注意点もあります。従来のFAQやオンラインマニュアルなどは簡易な形でナレッジベースに格納できますが、センターでよくあるPDFやWordなどの構造化文書は、RAGに格納する際に人によるクレンジングが必要です。注意点を踏まえ、RAG検索と生成AIをかけあわせることで回答率に飛躍的な向上が期待できます。モビルスのお客さまでは、約80%まで回答到達率が上がったという事例もあります。今後2025年を視野に入れると、検索はこうした形に移っていくと考えています。
※RAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)方式
2-4. 生成AI連携による手続き型ボットが高度化
チャットボットやボイスボットの今年予測されるトレンドは、生成AIと外部システムの連携による手続き型ボットの飛躍です。『コールセンター白書 2024』によると、47%が「新たに導入するツール」としてボイスボットを挙げています。ボイスボットの活用は、これまでの定型的な受け答えや一次受けをするのではなく、ボイスボットでヒアリングして得た情報を、外部システムと連携することで事務処理を自動で完結する使い方が主流になりつつあります。さらに生成AIを絡めるとどうなるか、次に見ていきましょう。
2-. 生成AI×ボイスボットの活用が普及し
生成AIとボイスボットが連携することで、どのように活用が広がるでしょうか。これまでのボイスボットは、ヒアリング項目が三つある場合、項目ごとに一つずつ質問し回答してもらう形式でした。生成AIと連携したボイスボットでは、三つある項目を一括で質問し、回答に漏れがあると追加で質問することができるようになります。
例えば、航空会社に電話して航空券を予約するシチュエーションだと次のようになります。
===
利用者:「チケットを取りたいんだけど」
生成AI連携のボイスボット:「航空券の予約ですね。ご予約にあたっていくつかご質問がございます。日本の出発空港と目的地、出発日と帰国日、搭乗クラスはファーストクラスかビジネスクラスか、ご希望の座席は窓側か通路側を教えてください」
利用者:「羽田、パリに近い空港、2025年の3月1日、帰国日は2025年の3月7日」
生成AI連携のボイスボット:「ご希望の出発時間と到着時間、搭乗クラスはファーストクラスかビジネスクラスか、ご希望の席は窓側・通路側かいかがでしょうか」
利用者:「出発は朝9時ころ、到着は夜早め、ビジネスクラス、窓側を希望」
生成AI連携のボイスボット「承りました」
===
航空券の予約は実際難しい面もあるかと思いますが、このように一括の質問ができ、回答漏れの確認と追加質問ができるようになるイメージです。これまでのボイスボットにおける課題の一つが、離脱率の高さです。質問項目が多く多段階構成になると離脱率が上がり、最後まで完了しないことが大きな問題になっていたので、生成AIと連携することで自動処理化は大幅に進むと考えています。
3. 生成AIがコンタクトセンターにもたらすインパクト
最後に、生成AIがコンタクトセンターにもたらすインパクトについて、さらに先の世界に視野を広げて見ていきたいと思います。
ポイントは主に四つです。
一つ目は、コンタクトセンターでの生成AIの活用方法が、ピンポイントでの活用からコンタクトセンター運営を支える各種業務フロー全般に広がることです。これにより、コンタクトセンター運営の品質と生産性が飛躍的に向上します。
二つ目は、自動応答の進化についてです。自動化は確実に進展し、回答可能なコールリーズンが大幅に拡大していきます。顧客の属性情報の連携によるパーソナル回答やプロアクティブな対応の自動化へと進化すると予測しています。
三つ目は、こうした変化に伴いコンタクトセンターの役割がどう変わるかです。コンタクトセンターの役割が再定義され、本来の目的であるCX創出による経営貢献へと大きく前進できると期待しています。
四つ目は、コンタクトセンター市場全体のシームレス化です。コンタクトセンター市場のシームレス化が進み、業種・業態を超えた連携・共創・競合が誘発されていきます。
一つずつ、詳しく解説します。
3-1. コンタクトセンター運営フローへの生成AI活用

コンタクトセンター運営を支える各種業務フローに生成AIを活用することにより、品質と生産性が飛躍的に向上していきます。
これまでは生成AI活用は、研修資料や壁打ちの相手などピンポイントでの活用が主流でした。コンタクトセンター運営は、応対品質維持のフロー、生産性向上のフロー、ナレッジ管理のフローといった運用フローの集合体です。こうした運用フローの中に、生成AIをどのように活用していくか、具体的なイメージをお話していきます。
KCS(ナレッジセンターサービス)への活用

コンタクトセンターが抱える課題の一つに、ナレッジ管理があります。「ナレッジがない・たどり着かない」→「ナレッジを使わない」→「ナレッジの老化」→「ナレッジがない・たどり着かない」……
といった負のスパイラルが起こることによって、センター運営の安定性の欠如が発生します。こうした課題に対して、顧客対応の質や効率を向上させる手法としてあるのが「KCS(ナレッジセンターサービス)」です。KCSは、ナレッジを収集・管理・共有・再利用することで、問題解決の効率を上げ、組織の学習能力を高めることを目的としています。コンセプトは大変良く、KCSによって成果を上げているセンターもある一方で、課題もあります。
KCSの課題①個人基礎スキルへの依存
KCSは、不足しているナレッジがあった際、各オペレーターが起票して管理担当者が収集し、必要なナレッジを抽出して新たなナレッジを追加して全体へ共有する流れです。ここで課題になるのが、問題把握や整理力、文章力など個人基礎スキルへの依存です。ナレッジの起票がオペレーター個人のスキルに依存しているほか、そもそもナレッジを使用するかはオペレーター判断に委ねているためです。
KCSの課題②稼働管理コストとアナログな管理フロー
オペレーターから起票されたナレッジを全て確認・抽出するマネージメントフローがアナログ(人への依存)であり、稼働コストがかかる上、抜け漏れの検知が困難であることも課題です。
KCSの課題③検索システムの限界
これまでのナレッジ検索のシステムは、文字列一致検索が主流で、メンテナンスの負荷が増え続ける構造でした。こうしたシステム的な限界も課題になっています。
突合チェック・追加FAQの抽出も生成AIで自動化、メンテナンス時間を大幅削減

では、生成AIを活用してFAQドラフトを自動作成できると、どういう業務フローになるか見ていきます。応対中に質問が入ると必ずQAが創出されて、すべて収集して生成AIにデータが渡りナレッジデータベースを自動突合し、類似度を検索、今のナレッジにないものだけが最終的に抽出される業務フローとなります。
業務終了時とほぼ同時に追加ナレッジ候補が自動で挙がってきて、管理者は確認し本当に必要なものだけを選びナレッジとして追加する流れです。一日単位で業務フローが構築されるので、正確性と時間軸をかなり短縮し、センター運営の効率化に大きく貢献できます。
応対履歴から構造化されたQAを瞬時に自動生成しナレッジ管理のメンテナンス時間を大幅に削減することは、オペレーターや管理者の負担軽減にも効果的です。
製品リスク管理マネジメントへの活用

コンタクトセンター運用フローへの生成AI活用として、製品のリスク管理マネジメントもあります。応対の中で企業にとって厳しい意見等が含まれていた際に、抽出して吸い上げフィードバックする流れがありますが、現状は属人化していることが課題です。このフローについても、生成AIを活用し自動化できるので、センター運営の効率化に貢献できます。
3-2. 生成AIによる自動対応の進化(プロアクティブ対応)

生成AIによる自動対応の現在地は、オペレーション支援とRAGを使った汎用回答生成が行われている段階です。
2025年春から夏にかけて、ユーザー向けの自動回答サービスの提供が開始されていきます。割り切った考えをお持ちの企業から、生成AIを活用した顧客向けの自動回答サービスの提供が出始めると考えています。
その後は、契約情報に基づく回答などパーソナルに対応する自動回答や、プロアクティブな回答の自動化など、自動化の範囲が著しく広がってくることが予測できます。
3-3. コンタクトセンターの役割はCX創出による経営貢献へ

「コンタクトセンター設立の目的」は「顧客満足度の向上」や「VOCの収集と共有」が上位を占めていますが、「最も重視している品質/パフォーマンス基準」は「放棄呼(応答率)」が圧倒的に多く、設立目的が反映されていません。設立目的と評価基準の乖離は、日本とアメリカを比較すると日本は非常に厳しい乖離状況です。
生成AIの登場で、コンタクトセンターの役割はCX創出による経営貢献へと変化していきます。コンタクトセンターが本来の目的のために機能する時代が来るはず、来てほしいという思いです。
そもそも生成AIの進化は何をもたらすのか?
生成AIに対する捉え方は、「自動化による省力化」で「現状の効率化」を目的に使うものという限定的なものになっているのではないでしょうか。現在の効率化によって「人が人でしかやれない仕事に費やすリソースを拡大」して、「さらなるCXの改善」に向かうことが本質的な捉え方です。
これからのCXは、Proactive・Predictive・Personalがキーワード

これまでのコンタクトセンターは、「Reactive(受け身対応)」でしたが、これからは
「①Proactive(先回り対応)」「②Predictive(顧客痛点の予測)」「③Personal(個別対応)」の三つに変化していくと考えています。
これまでは、苦情や意見など申し立てをした人に対していかに対応するかが主でしたが、これからはそもそも申し立てが起こらないようにするために先回りした対応や、声を挙げなかったサイレントカスタマーへのアプローチなどを通してCX向上を促す役割に変わっていきます。
例えば以下のイメージです。
・運用改善のアイデアが浮かばないクライアントに対して、その業界ごとの傾向値を提案し、運用の良いスコア、改善すべきスコアを先回りで示唆、提案する。
・ユーザー属性ごとのつまずきやペインポイント(痛点)をデータで事前に把握しているので、使い方の提案をする。
・何気なく自社サービスの不満をツイートやクチコミしたユーザーを自動的に検知して、フォローアップとユーザーコミュニティへの案内をする。
コンタクトセンターの役割は経営貢献へ

今後のコンタクトセンターの役割は、売上拡大、顧客満足度の向上、高付加価値なサービス応対に大きくシフトすると考えられます。
これまでのコンタクトセンターは、「コストセンター」として費用削減を最優先に注力してきましたが、「プロフェットセンター」へポジションチェンジをして売上収益・ROIの拡大に貢献する役割になっていくでしょう。
それに伴い評価軸も、応答率を重視するKPIから、NPS(ネットプロモーションスコア)や顧客満足度、顧客ロイヤリティ、LTV(ライフタイムバリュー)向上を目的とするKPIへ変更されると考えています。
そのために、これまでのReactiveなサポートから、Proactiveなサポートへ変えていくことが必要です。これらができるとコンタクトセンターの経営貢献が実現していきます。実現のための要は生成AIです。生成AIがこれまで人がやらなくても良かった仕事を代行することで、人は本来やるべき仕事に注力することができるようになっていきます。
3-4. コンタクトセンター市場のシームレス化が進む

コンタクトセンター市場を見ると、現状はBPOやコンサル、SIなどシステム、SaaSを合わせて約2兆円です。それぞれの市場がすみわけされていましたが、クラウド型SaaSソリューションへの市場シフトや多くの業務が生成AIによりシステム対応化することで、シームレス化が進んでいきます。
競合が進むだけでなく、業種業態を超えた連携・共創・協業も進み、結果、市場の成長スピードが拡大していくでしょう。市場の拡大によってコンタクトセンターが本来在るべき姿を実現していく、2025年はその元年となると考えています。
オペレーション支援AI「MooA」紹介資料
MooA®(ムーア)は生成AIや独自のAI技術を取り入れた、オペレーターの応対業務の負担を軽減し、応対業務全体の短縮化とVOCの活用を促進するオペレーション支援AIです。チャットボットやボイスボットと連携しながら、応対中のオペレーターの回答業務を支援します。機能、解決できることなどを紹介資料にて掲載しています。
下記より、ダウンロードいただけます。ぜひご覧ください。
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