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コールセンター(コンタクトセンター)向けチャットボット5種を徹底比較|シナリオ・機械学習からベクトル検索・RAG、AIエージェントまで最適な選び方と運用の指針を解説

投稿日:2026年3月31日 | 更新日:2026年3月31日

コールセンター(コンタクトセンター)では、労働人口の減少や顧客ニーズの多様化、デジタル接点の重要性の高まりを背景に、自動化技術の導入が急務となっています。特に「生成AI」の台頭は、従来の定型応答を超えた柔軟な対応を可能にし、センターの在り方を根本から変えようとしています。しかし、「自社に最適な手法はどれか」「生成AIをどう組み合わせれば成果が出るのか」という新たな課題に直面している担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、堅実な「シナリオ型/キーワードマッチング型」や従来のAIを活用した「機械学習型」から、最新の「ベクトル検索型」や生成AIを活用した「RAG(検索拡張生成)型」「AIエージェント型」まで、五つのチャットボット手法を徹底比較。それぞれのメリット・デメリットを整理し、導入を成功に導くための運用の指針を解説します。

<目次>


チャットボットの種類

チャットボットとは、ユーザーへの問い合わせに対してロボットが自動でテキストを返答する仕組みです。チャットボットは、AIの活用有無で大きく分けられます。非AI搭載型チャットボットは、あらかじめ用意したルールに沿って動く(ルールベース)の「シナリオ型」や「キーワードマッチング型」です。AI搭載型には、大量のデータから学習し、ユーザーの質問の意図を理解して回答する「機械学習型」を始め、文章を数値化し、意味の近さで検索して回答を示す「ベクトル型」、生成AIを活用した「RAG(検索拡張生成)型」や「AIエージェント型」といった新しい技術も登場しています。

・シナリオ型/キーワードマッチング型チャットボット
・機械学習型チャットボット
・ベクトル検索型チャットボット
・RAG(検索拡張生成)型チャットボット(生成AI)
・AIエージェント型チャットボット(生成AI)

以上、五つのチャットボット型について、基本的な仕組みからメリット・デメリット、事例など次の章から詳しく解説します。

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シナリオ型/キーワードマッチング型チャットボット

一つ目は、あらかじめ用意したルールに沿って動く(ルールベース)非AI搭載型の「シナリオ型/キーワードマッチング型チャットボット」です。

仕組み・特徴

シナリオ型/キーワードマッチング型チャットボットは、あらかじめ定義されたルールや選択肢のツリー構造(フローチャート)に沿ってユーザーを誘導し、回答に導く手法です。もっとも伝統的なチャットボットの使われ方で、特定の業務領域において非常に高い価値を発揮し続けています。

「ルールベース型」とも呼ばれ、AIによる自然言語の高度な解析を行わない代わりに、設計者が意図した通りの導線を構築できることが特徴です。システム構築の難易度は比較的低く、導入コストを抑えやすいというメリットがあります。運用開始時には、想定される質問とその回答をツリー状に組み上げるだけでよく、AIのような膨大な教師データの学習を必要としません。

シナリオ型とキーワードマッチング型は、どちらも「ルールベース」という大きな枠組みでは共通していますが、実務上の動作や目的は異なります。

【シナリオ型チャットボット】

・仕組み:会話の流れ(フローチャート)を事前に作成し、ユーザーが選択肢をクリックして回答にたどり着く形式。

・特徴:ユーザーは選択肢を選ぶだけなため、迷わない。資料請求、キャンペーン案内、よくある質問(FAQ)が少ない単純な分岐に向いている。

【キーワードマッチング型チャットボット(辞書型・一問一答型)】

・仕組み:ユーザーが自由に入力した言葉(キーワード)を認識し、事前に登録したFAQの中から一致するものを表示する形式。

・特徴:検索に近い。よくある質問への対応で活用できる。

コールセンターに導入するメリット

シナリオ型/キーワードマッチング型チャットボットの最大の強みは「確実性」です。ユーザーが選択肢を選ぶ、もしくは事前に登録したFAQから一致するものを表示する形式であるため、システムが誤った情報を勝手に生成するリスクが原理的に存在しません。正確性が最優先される契約手続きの案内、本人確認のプロセス、住所変更の受付といった定型業務において効果的です。

また、ユーザーにとっては「何を入力すればよいか」を考える必要がなく、提示されたボタンをタップするだけで済むため、モバイル端末からの利用においても利便性が高いです。企業側にとっては、意図した通りの「正解」へユーザーを確実に誘導できるため、手続き業務の完結率を高めることができます。

デメリットと運用上の課題

一方で、シナリオ型/キーワードマッチング型チャットボットの弱点は柔軟性の欠如です。用意されたシナリオの範囲内でしか対応できなかったり、ゆらぎ(表記揺れ、類語)に弱く完全に一致したキーワードでないと回答が表示されなかったりするため、ユーザーが自由に文章を入力して質問したい場合には「対応不可」となるケースが多くあります。

また、複雑な問い合わせに対応しようとしてシナリオを多層化・分岐させすぎると、ユーザーが回答に辿り着くまでに何度も選択肢を選ばなければならず、かえってストレスを与える結果となってしまいます。

管理面においても、情報の追加や変更が生じるたびに、複雑に絡み合ったシナリオを調整しなければならなかったり、対応範囲を広げようとすると膨大な辞書登録が必要になったりと、メンテナンス工数が増大することも課題です。

適合するFAQや業種・カテゴリ

  • 誘導・受付: FAQ数が少なく、スマホで表示できる6個前後の条件分岐(シナリオ)で回答できるFAQ。参考FAQ数:約200QA前後。

一方、ユーザーが自由な文章で細かなニュアンスを伝えたい場合や、想定外のキーワードが含まれる質問といった「複雑な相談業務」には不向きです。

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機械学習型チャットボット(旧来型チャットボット)

二つ目は、自然言語処理(NLP)技術を活用し、ユーザーの質問意図を読み取り回答する「機械学習型」チャットボットです。AI非搭載のキーワードマッチング型から一歩進み、柔軟な対応を可能にします。

仕組み・特徴

機械学習型チャットボットは、大量の会話データ(教師データ)をAIに学習させることで、言葉の裏にある「意図」を理解する仕組みです。単なるキーワードの一致だけでなく、文脈やニュアンスを考慮した応答ができるのが特徴です。また、シナリオ型チャットボットと組み合わせることで、ユーザーの意図を汲み取りながら特定のタスクを実行したり、複雑な対話フローを構築したりすることもできます。

コールセンターに導入するメリット

機械学習型チャットボットの最大の強みは、「柔軟性」と「信頼性」の両立です。キーワードに縛られず、質問の「ゆらぎ(言い回しの違い)」を理解できユーザーの多様な言い回しに対しても、学習データに基づいて適切な回答を提示できます。あらかじめ用意された回答群から最適なものを選んで提示するため、生成AIのようなハルシネーション(もっともらしい嘘)の心配がありません。また、運用中の利用状況を学習し続けることで、応答精度を段階的に向上させていくことができます。

デメリットと運用上の課題

導入と維持には相応のパワーが必要です。精度を出すためには、大量の学習データの準備やモデルのトレーニングが必要となり、導入と運用に時間とコストがかかります。回答の精度は学習データの質と量に直結します。また、AIが「なぜその回答を選んだのか」というプロセスが人間には見えにくい(ブラックボックス化)という側面もあります。

生成AIの登場によりRAG型チャットボットなどに立場を取って代わられつつありますが、意図しない応対を徹底して防ぎたい堅実な運用シーンでは、今なお安定した信頼感を発揮する選択肢と言えるでしょう。

適合するFAQや業種・カテゴリ

  • 意図判別・一次受け: 多様な言い回し(ゆらぎ)を理解し、適切な回答や有人窓口へ振り分けるコンシェルジュ的な業務。
  • 信頼性重視のFAQ: 決められた回答群からのみ提示するため、ハルシネーションを防ぎつつ柔軟に応対したい窓口。

一方、精度向上に不可欠な大量の学習データ(教師データ)の準備やメンテナンスが困難な場合など、リソース不足の現場には不向きです。

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ベクトル検索型チャットボット

三つ目は、ハルシネーションの懸念がなく検索精度を向上させることが可能な「ベクトル検索型チャットボット」です。

仕組み・特徴

ベクトル検索型チャットボットは、テキストデータを数値の列(ベクトル)に変換し、その「意味の近さ」を計算することで、膨大なFAQデータの中から最適な回答を抽出する技術です。従来の「キーワード一致」に依存した検索システムを大きく超える性能を持っています。

従来の検索が、例えば「紛失」と「失くした」という異なる単語を別物として扱っていたのに対し、ベクトル検索はこれらが「似た意味を持つ」ことをAIが数値的に理解します。このため、ユーザーが自然な文章や曖昧な表現で質問しても、意図を正確に読み取り、該当するFAQを提示することが可能です。

コールセンターに導入するメリット

ベクトル検索型チャットボットの導入は、コールセンターの運用コストを大幅に改善することが可能です。従来の機械学習型チャットボットでは、初期から精度を出すためには、大量の学習データの準備やモデルのトレーニングが必要で、回答精度を維持するために「類似質問例」を何パターンも登録し、AIに学習させる必要がありました。しかし、ベクトル検索型では、既存のFAQデータをそのまま移行するだけで、AIが自動的に「表記ゆれ」や「類義語」を吸収して検索を実行します。

これにより、初期構築のトレーニング・運用時のメンテナンス負荷が大幅に軽減され、情報の追加もFAQデータの更新だけで済むようになります。金融機関のような厳格な情報管理が求められる現場でも、登録されたFAQという「根拠のある情報」のみを提示するため、誤情報のリスクを排除しつつ、高度な自動応答を実現できます。

デメリットと運用上の課題

従来のキーワード一致に縛られない分、参照元となるFAQデータの質が回答の正確性に直結します。そのため、FAQが不十分な状態では、意図の解釈は正しくても「適切な回答文」を提示できなくなるリスクも生じます。

また、 高度な検索アルゴリズムを活用するため、シンプルなシナリオ型と比較すると導入コストが高くなる傾向にあります。

適合するFAQや業種・カテゴリ

  • 機械学習型チャットボット(旧来型チャットボット)で精度向上に不可欠な大量の学習データ(教師データ)の準備やメンテナンスが困難な現場。
  • 機械学習型チャットボット(旧来型チャットボット)で運用破綻している場合。
  • 初期状態や最小のメンテナンスで一定の回答精度を出したい場合。
  • FAQ数は1,000~2,000QA前後まで対応可能。

【事例】みずほ証券:ベクトル検索型チャットボット導入で検索精度の向上と業務効率化を実現

みずほ証券株式会社は、Webサイトの顧客対応にベクトル検索型チャットボット「MOBI BOT AI Vector Search」を導入しました。テスト運用の結果、顧客が入力した自然な長文や曖昧な表現に対しても、高い検索精度でFAQから正確な回答を提示できることをテスト確認し、正式導入に至りました。同義語や表記ゆれへの自動対応により、メンテナンス工程を削減しながら、24時間365日の高品質なサポート体制を維持しています。
<プレスリリース>
みずほ証券、「MOBI BOT AI Vector Search」を導入、チャットボット上での よくある質問の検索精度向上とコンタクトセンター業務効率化を実現

【事例】ファンケル:ベクトル検索型チャットボットで完了数が約2割向上、有人対応の削減による業務効率化も実現

株式会社ファンケルは、FAQサイトやLINE公式アカウントでの顧客対応にベクトル検索型チャットボット「MOBI BOT AI Vector Search」を導入しました。実証実験の結果、従来のボットに比べ問い合わせ完了数が約2割向上し、高い検索精度が確認されました。AIが自然な文章や曖昧な表現の意図を理解し、既存FAQから正確な回答を提示することで、40代以上の主要顧客層の自己解決を強力に支援します。有人対応の削減による業務効率化も実現しており、今後は他ブランドへの展開も予定しています。

<プレスリリース>
モビルスのAIを活用したベクトル検索型チャットボット「MOBI BOT AI Vector Search」がファンケルで導入 実証実験では従来のチャットボットに比べ、問い合わせ完了数が約2割向上


RAG型チャットボット

四つ目は、大規模言語モデル(LLM)のテキスト生成能力と、外部情報の検索技術を組み合わせた「RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)型チャットボット」です。

仕組み・特徴

RAG型チャットボットは、LLMが持つ「滑らかな文章生成能力」を活用しつつ、外部の信頼できるデータベース(マニュアルや社内文書)を根拠として回答を作成する仕組みです。

RAGは大きく以下の三つのフェーズで機能します。

1. Retrieval(検索): ユーザーの質問に関連する情報を、ナレッジベース(PDF、Word、データベース等)から探し出す。

2. Augmentation(拡張): 検索された情報をプロンプト(指示文)に組み込み、LLMにコンテキスト(背景・文脈・状況・前後関係の情報)として与える。

3. Generation(生成): LLMが提供された情報を基に、自然で人間らしい文章で回答を生成する。

コールセンターに導入するメリット

RAG型チャットボットの最大の強みは、情報の最新性と広範な知識への対応力です。LLM自体を再学習させるには膨大なコストと時間がかかりますが、RAGは外部のデータベースを更新するだけで、最新の製品情報や社内規定を反映した回答が可能になります。

また、単一のFAQでは解決できないような、複数のマニュアルを横断して読み解かなければならない複雑な質問に対しても、AIが情報を集約し、要約して回答できるため、自己解決率の飛躍的な向上が期待できます。回答に根拠となった情報の出典(ソース)を表示させることで、情報の透明性と信頼性を担保できる点も大きな利点です。

デメリットと運用上の課題

RAG型チャットボットを導入する際の最大の懸念点は、生成AI特有の「ハルシネーション」です。しかし、RAGはこのリスクを最小限に抑えるための技術的アプローチを備えています。回答生成の前に必ず信頼できるソースを検索し、その内容に限定して回答を構成させることで、ゼロから回答を創作する場合に比べて誤情報のリスクを大幅に低減できます。

また、FAQの回答をナレッジベースに登録し「承認された回答の原文のみを回答する」事でハルシネーションの回避ができます。

ナレッジベースとなる大量のドキュメントから、ユーザーの質問に関連性の高い情報を検索する仕組みは、ドキュメント側に問題がない場合には非常に大きな強みとなります。そのため、ナレッジベースの整備が重要です。ドキュメント側がルールに則った作りになっている場合の回答精度は非常に高いです。ドキュメント側の整備が大きなテーマとして重くのしかかるため、今あるドキュメントの整備を行うか、整備する形に従って新たにドキュメントを作りそれを活用するのかで、方針と工数はかなり差が出てくるでしょう。

適合するFAQや業種・カテゴリ

  • 専門的な技術サポート: 複数の膨大なマニュアルを横断して読み解く必要がある、複雑な解説業務。
  • 最新情報の提供: 製品仕様の変更や社内規定の更新が頻繁にある、専門性の高い社内外ヘルプデスク。

一方、生成AI特有のハルシネーションのリスクを、運用体制や技術で完全にカバーできない窓口など、法的な誤りを許されない業務には、ナレッジベースシステムとの連携でQAを生成・承認後に、RAG型チャットボットは検索のみに特化させ、承認された回答原文のみを提示する方法もある。


AIエージェント型チャットボット

五つ目は、「AIエージェント型チャットボット」です。生成AIを部分的に利用したワークフロー型と、与えられた目標に基づいて、自律的にタスクを計画・実行する生成AI自律型の二つに分類されます。大規模言語モデル(LLM)の高度な推論能力と、従来のワークフローシステムが持つ実行力を組み合わせることで実現する未来の自動化について解説します。

仕組み・特徴

  1. 生成AIを部分的に利用したワークフロー型
    • 従来のルールベースのワークフロー機能に、生成AIの文脈理解力、要約・分類能力を組み込みます。
    • 複雑な条件分岐や判断が必要な場面でAIが支援することで、ワークフローの柔軟性を高め、より高度な業務プロセス自動化を可能にします。
  2. 生成AI 自律型
    • 与えられた最終目標に対し、人間による詳細な指示なしに、システムが自らタスクを分解し、必要な情報やツールを選択・活用しながら実行します。
    • 現時点では研究開発段階の技術であり、本格的な実用化には安全性や倫理的制御が課題となります。
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コールセンターに導入するメリット

AIエージェント型は、単なる自動応答を超えた「業務の完結」に真価を発揮します。

  • 高度な判断を伴うワークフローの自動化: 生成AIの文脈理解力を活用し、問い合わせ内容の要約・分類、さらには複雑な条件判断をAIが支援します。特に今までは手動で作成していた、聞き返しシナリオの自動文章生成が可能になり、従来のシステムでは難しかった高度な業務プロセスの自動化とシナリオ作成業務の効率化が可能です。
  • オペレーターの負担軽減と高度化: 定型的なタスクや複雑な一次情報の整理をAIが自律的に行うことで、人間のオペレーターはより難易度の高い、付加価値の高い業務に集中できる環境を構築できます。
  • 自律的な目標達成: 特に「自律型」においては、詳細な指示なしにAIが自らタスクを分解・実行するため、徹底した効率化が期待できます。
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デメリットと運用上の課題

次世代の技術ゆえに、実運用においては以下の点に注意が必要です。

  • 構築・運用における専門知識: ワークフローの設計に加え、生成AI(LLM)プロンプトの知識も必要なため、設定には追加の知識が求められます。
  • システム連携の複雑性: 目標達成のために既存システムと連携させる場合、その設計や構築が複雑化し、コストが高額になる場合があります。
  • ガバナンスと安全性の確保: 特に「自律型」は研究開発段階の側面も強く、意図しない行動を防ぐための安全性や倫理的制御が大きな課題となります。
  • 内製化の推進:多くのベンダーは内製化への対応が難しく、改修のたびにコンサルティング費やフロー作成費が発生するため、運用コストが高騰する傾向にあります。コスト抑制と迅速な運用を実現するため、自社での操作・管理が可能なSaaS形式のパッケージを選定しましょう。

適合するFAQや業種・カテゴリ

  • 業務プロセスの完結: 単なる回答にとどまらず、複雑な条件判断を伴うワークフローの自動実行(保険の加入相談や銀行の諸手続き等)。
  • 高度な事務支援: 問い合わせ内容の要約・分類から、次に必要なアクションの自動計画までを行うオペレーター支援。

一方、意図しない行動を防ぐための安全性や倫理的制御、監視体制が整っていない状態での運用といった、完全な無人自律対応には不向きです。
コールセンターなどオペレーター業務自体がワークフロー化している企業は、自立型AIエージェントではなく、ワークフロー型AIエージェントが適しています。
※ワークフロー型AIエージェントとは、シナリオ型の定型フローと生成AIを組み合わせたリスクの少ない生成AI活用です。


チャットボット5種類の比較と適応性

シナリオ型/キーワードマッチング型、機械学習型、ベクトル検索型、RAG型、AIエージェント型の5種類のチャットボットを、コールセンターが重視する主要な評価軸で比較し、メリットとデメリット、コールセンターで適している業務と応用性について表にまとめました。

種類 メリット デメリット
シナリオ型/キーワードマッチング型

・導入・運用が比較的容易でコストも低い

・応答の正確性が高い(設定されたキーワードとシナリオに基づいて応答する。ハルシネーションが発生しない)

・特定のタスクや定型的な問い合わせに強い。

・シナリオを細かく設計することで、複雑な問い合わせにも対応可能。

・設定されていないキーワードやあいまいな表現の質問には対応不可。

・人間のような自然な対話が難しい。

・ユーザーの意図を正確に理解できない場合や定型外の質問への対応困難で柔軟性に限界がある。

・複雑化するとメンテナンス工数が指数関数的に増大する。

機械学習型(旧来型チャットボット)

・応答の正確性が高く、決められた回答群から選択して提示するため、生成AIのような「ハルシネーション」の心配がない。

・ 学習データに基づき、キーワードだけでなく文脈やニュアンスを考慮した柔軟な応答が可能。

・ 利用状況に応じた学習を繰り返すことで、応答精度を段階的に高められる。

・精度を出すために大量の学習データ(教師データ)の準備やトレーニングが必要で、導入と運用に時間とコストがかかる。

・AIがなぜその回答を選択したのか、判断プロセスが人間には見えにくい(ブラックボックス化) 。

・ 回答の質が学習データの質と量に大きく左右される。

ベクトル検索型

・曖昧な表現、表記ゆれ、類義語に対応し、高い検索精度を実現。

・初期構築のトレーニング・運用時のメンテナンス負荷が低い(FAQの更新のみで済む)。

・ハルシネーションが発生しない(登録された根拠に基づく)。

・応答精度は既存のFAQデータの質に大きく左右される。

・導入コストはシナリオ型より高い。

RAG型

・外部データベース更新で最新情報を回答に反映でき、情報の最新性が高い。

・複雑な質問に対しても、複数の情報を集約・要約して回答が可能。

・回答の根拠(出典)を表示でき、透明性が高い。

・生成AI特有のハルシネーションのリスクが存在し、技術的な抑制が必要。

・参照するデータの質に回答精度が依存する。

・導入コストが高い。

AIエージェント型

・問い合わせ内容の要約・分類、複雑な条件判断の支援が可能。

・ワークフロー型で、従来のシステムよりも柔軟で高度な自動プロセスの自動化とシナリオ作成業務の効率化を実現。

・人間の介入を減らし、オペレーターのより高度な業務への集中を促進。

・ワークフロー設計に加え、生成AIの知識も必要で、設定に高度な専門知識が求められる。

・既存システムとの連携が複雑化する場合がある。

・開発や運用に高額なコストがかかる場合がある。

以下は、各チャットボットがコールセンターにおいて得意とする業務や、今後の応用が期待される業務をまとめた表です。

種類

適している業務

応用できる業務

シナリオ型/キーワードマッチング型

・確実性が最優先される定型手続き(住所変更、本人確認、契約内容の案内など)。

・FAQの中でも数が少なく分岐が明確な問い合わせ(資料請求、キャンペーン案内など)。

・今後の生成AIとの連携による、不足情報の自動聞き取りや、追加質問への対応。

機械学習型

・ 多様な言い回しを理解し、適切な回答やカテゴリーへ分類する一次受け業務。

・ 意図しない応対を徹底して防ぎたい、堅実な運用が求められる窓口業務。

・ シナリオ型との組み合わせで、ユーザーの意図を汲み取りながら、特定のタスク(予約や手続き)を実行するフローの構築 。

・問い合わせ内容から最適な有人部門や専用ページへ振り分けるコンシェルジュ機能。

ベクトル検索型

・よくある質問(FAQ)の検索と自己解決の促進。

・利用者が自由な文章や曖昧な表現で質問するチャネルでの一次対応。

・汎用的な検索精度向上により、応用範囲が広がる。

RAG型

・複数のマニュアルを横断するような複雑な技術解説や情報要約。

・顧客ごとにパーソナライズされた丁寧な説明が必要な場面。

・最新の製品情報や社内規定を反映した、専門性の高い回答の提供。

AIエージェント型

・生成AIを部分的に利用したワークフロー型:複雑な条件判断の支援、問い合わせ内容の要約・分類。

・生成AI 自律型:人間の指示なしに、複雑なタスクを計画・実行する、徹底した効率化と高度な問題解決。

まとめ

チャットボットは、コスト削減のためのツールから顧客体験(CX)を戦略的に向上させるためのプラットフォームへと進化を遂げてきました。シナリオ型/キーワードマッチング型、機械学習型、ベクトル検索型、RAG型、AIエージェント型には、それぞれに特徴があり、どれか一つが優れているというわけではありません。重要なのは業務プロセスと顧客ニーズに合わせた「適材適所」の選択です 。

たとえば、法的な手続きや、一言一句正確さが求められる契約関連の回答には、「シナリオ型」や「ベクトル検索型」が適しています。一方で、マニュアルが膨大で検索が困難な技術サポートや、顧客ごとにパーソナライズされた丁寧な説明が必要な場面では、「RAG型」の力が発揮されます。また、AIエージェント型の顧客対応への実運用が始まると、自動化の対応範囲はさらに進化するでしょう。

導入後の失敗を防ぐためには、目的の明確化とKPI設定、そしてPDCAサイクルによる継続的な精度改善が欠かせません 。ハルシネーションのリスクを適切に制御しつつ、AIのポテンシャルを最大限に引き出すことで、コールセンターは企業と顧客を結ぶ「価値創造の拠点」へと進化できるはずです。

本記事を執筆するモビルスでは、有人チャットとのスムーズなハイブリット運用が可能で、ベクトル検索機能も搭載できるAIチャットボットをはじめ、コールセンターのCX向上を通じて企業の競争力を高め、収益を最大化するための総合的な支援を提供しております。

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