※レポート記事①はこちらです
コロナウィルス禍で、コンタクトセンターの現場では様々な施策が打たれてきました。その中でどの企業も検討した在宅オペレーションの導入。しかし導入に至った企業は半数に満たないのが現状です。在宅オペレーション導入において企業が直面する課題は何か?第二波に備えて、どの様にして課題を解決していく事が出来るのか?モビルスの石井が登壇し、実際の企業事例を基に解説しました。
目次
在宅オペレーション導入時の課題検討に必要な3つの要素
オペレーションで個人情報に対応する方法
・コールリーズンで分類し、個人情報の関与有無で振り分ける
・対応ステップで区分する
・アウトバンド対応に限定する
システムで個人情報に対応する方法
・認証システムの活用
・オペレーションのモニタリングを活用
・個人情報の回避をシステムで対応する
最も重要なマインドセット対応
在宅オペレーション導入時の課題検討に必要な3つの要素
【登壇者プロフィール】
モビルス株式会社
代表取締役社長 石井智宏
ソニー株式会社にて11年間ラテンアメリカにおけるセールスマーケティングに従事。
5カ国のエスカレーションコールを受け取る電話セールスセンターの構築を担当。
2014年モビルス株式会社に参画、代表取締役社長就任。
コンタクトセンター(コールセンター)における在宅勤務(在宅オペレーション)導入検討時の主な課題は、「対応品質」「労務管理」「情報セキュリティ」です。その中で最も懸念されているのが「情報セキュリティ」ですが、具体的には何を指すのでしょうか。外部からの悪意ある攻撃か?内部からの漏えい(故意・非故意)か?「この二つを混在して考えている企業も多い」と石井は言います。
在宅オペレーション導入の際に、特に課題になるのが「内部からの個人情報漏洩」の懸念であり、「個人情報を取り扱うから在宅対応は無理と、思考停止してしまうケースが多い」とのことです。個人情報の扱いは大変センシティブな問題ではありますが、石井は「課題をクリアするのは簡単なことではありませんが、分解して考えることで在宅対応の可能性を見出せます」と話し、「オペレーション対応」「マインドセット対応」「システム対応」の3つに分解し、対応を一つひとつ考えることが重要だと話しました。
オペレーションで個人情報に対応する方法
まず、オペレーションを分解することで、在宅対応可能な部分を考えていきます。
コールリーズンで分類し、個人情報の関与有無で振り分ける
一つ目は、コールリーズンで分類する方法です。入ってきたコール内容を、IVRなどを使い、個人情報を含むものと含まないものに分類します。個人情報を含むものは、そのままセンターで対応し、含まないものは在宅で対応。「個人情報を扱う内容を、在宅対応では受けないと決める。情報セキュリティを回避しながら在宅対応をスタートできる、最初のステップとしてお勧めです」(石井)
また、対応する“人”で分類する方法もあります。コールリーズンで分類し、個人情報を含むものは正社員が在宅で対応し、含まないものを派遣社員が在宅で対応するという方法も考えられます。
対応ステップで区分する
二つ目の方法は、対応のステップで区分し、在宅対応可能な部分を見つけていく方法です。例えば「本人確認が必要なステップはセンターで対応し、問い合わせ対応に進んだ時点では、個人情報の確認ステップを終えているので在宅対応へ渡す。ほかには、配達確認の依頼など個人情報が必要なものはセンターが対応し匿名化、問い合わせへの回答作成は在宅で対応、回答対応をセンターが行うなどです。」(石井)
アウトバンド対応に限定する
三つ目は、アウトバンド対応に限定する方法です。初回の手続き受付をセンターが対応し、それ以降のアウトバンド対応は在宅で行う。営業やマーケティング関連などアウトバンドであれば、対応リストに沿って在宅で対応可能とのことです。
システムで個人情報に対応する方法
システムでの対応については、「インフラや認証」、「オペレーションのモニタリング」、「個人情報の回避」の3つに分けて解説しました。
認証システムの活用
ハードウェアは、データをローカル環境に保管しない「シンクライアント」や、サーバー上の仮想デスクトップを利用する「ゼロクライアント」を紹介しました。
ネットワークは、アクセス可能なIPアドレスを制限することや、端末からクラウドまでの回線にVPNを引くことで通信のセキュリティを担保する方法、VPNを介さず安全に社内のウェブアプリにアクセスできるGoogleの「BeyondCorp」の活用などがあるとのことです。
さらに石井は「ユーザーID単位や端末単位で認証ポリシーやアクセス制限を設定するなど、カスタム認証をかけること。また、ログインしたまま席から離れて一定時間が経つと、自動的にログアウトする、自動認証ログアウト。IDやパスワードに加えて生体認証等の2段階認証をかけることで、なりすましを防ぐことも考えられます」と、インフラや認証でセキュリティをかける方法を解説しました。
オペレーションのモニタリングを活用
パソコンの操作画面とオペレーターを映しているカメラをランダムで撮影することで、「お互いに見守っているという感覚で、心理的抑圧をかけて漏洩を防ぐ」方法や、さらにAIの画像分析と組み合わせることで、「画面をスマホで撮影している画像や、複数人が写り込んだ画像を自動で選定することもできます」(石井)
パソコンの操作画面とオペレーターを映しているカメラをランダムで撮影することで、「お互いに見守っているという感覚で、心理的抑圧をかけて漏洩を防ぐ」方法や、さらにAIの画像分析と組み合わせることで、「画面をスマホで撮影している画像や、複数人が写り込んだ画像を自動で選定することもできます」(石井)
また、横連携のシステムとしてWeb会議システムを常時接続することで「他の人と繋がりながら仕事をしている感じを抱ける。一体感を醸し出しながら漏洩防止にもなる」とのことです。
個人情報の回避をシステムで対応する
個人情報を取り扱わない内容のみ在宅で対応する、とオペレーションで区分した場合も、意図せず個人情報が入ってきてしまう場合があります。その場合に、自動的に個人情報をマスキングする機能が役立ちます。モビルスの提供するチャットシステムでは、個人情報が入った際に警告メッセージを出す機能を実装しています。AIによる自動マスキング機能も実装準備中です。
ほかには、ボットを利用して個人情報を迂回する方法があります。「個人情報の取得が必要な会話部分を、シナリオ型のチャットボットで回避する方法です。個人情報を取り扱うプロセスを自動化してしまいます」(石井)
さらに石井は住所変更を例に、LINEを活用した個人情報の回避の方法も紹介しました。「LINEで友だちになり、企業の会員情報と紐づけをするのですが、LINE上でデータのやりとりをすることなく、Webサイトを経由してデータベースと紐づけを行います。そこでLINE上で手続きをする際の認証コードを取得。住所変更の際に認証コードを入力し、顧客データベースと条件のマッチングをかけ、確認を取ります。リフ(LIFF=LINE Front-end Framework)を使うことで、実際はWebサイト上で住所確認等のやり取りをしているものが、ユーザー側にはLINE上で操作しているように見せることが可能です」
最も重要なマインドセット対応
最後は「一番大事だと思う」と話す、マインドセット対応です。企業のポリシーをどうセットするのか明確にしておくことで、システム対応やオペレーション対応を決めることができると言います。
「どのような状況になったときに在宅勤務を実施するのか?一部在宅化か?すべて在宅化か?その基準をどう決めるか。在宅勤務を可能とする資格や契約形態、勤続年数などどのような区分で対応するかなど、対応手順を定義します」(石井)。在宅勤務に必要な特別研修の設定や、雇用形態を見直す企業、アウトソーサーに委託していた一部をインハウス化して在宅対応するなどの動きも出ているそうです。
また、「オペレーターも故意でない漏洩事故への不安を抱えています。故意でない情報漏洩時の損害の補填が可能な保険を活用することで、オペレーター担当者の不安を低減することにも繋がります」と、情報漏洩時の保険活用の検討も視野に入れることを提案しました。
「チャットサポートを入れるとできる、オペレーションを組めばできる、ではなく、システム対応・オペレーション対応・マインドセット対応の3つが上手く組み合わさって初めて前に進める」と石井は強調します。在宅オペレーションはBCP対応として進める企業が多いですが、人材確保の面や働き方の多様化など、メリットが大きいです。「在宅オペレーションに必要な要素を、分解して考えることが大切です。すべての対応を在宅にすることが正解ではなく、部分的に考えていくことも良いと思います。一つひとつ分解する過程から一緒に考えていきましょう」と話し、セッションを終えました。
【セミナーレポート①もご覧ください!】
在宅オペレーションの実現に向けた、情報セキュリティ対応への解決策