新型コロナウイルス感染拡大に伴う、在宅勤務の促進
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、政府は企業に在宅勤務(テレワークを)や時差式出社を促進しています。
大手企業を中心に在宅勤務導入が進む中、飲食店や製造業など在宅勤務が難しい業種も存在します。コールセンター業は、顧客情報など機密性の高い情報を取り扱うことが多くセキュリティ面や、電話応対のシステムや運用体制の都合上、在宅勤務が難しい業種です。
しかし、感染者が発覚したことでコールセンターを閉鎖する企業も出るなど、コールセンター業界のBCP対策として在宅勤務の必要性が高まっています。また、75%(コールセンター白書2019より)のコールセンターでオペレーターの採用に苦戦しており、人材不足が深刻化していることや働き方改革の観点からも、在宅勤務は有望ではないでしょうか。
コールセンター業界における在宅勤務導入の障壁になっているものは何か、サポート業務における在宅勤務導入のメリット、課題やノウハウを考察していきましょう。
在宅勤務がコールセンターで導入されにくい理由
まず、コールセンターに限らず、テレワーク全体の動向を国土交通省の「平成30年度テレワーク人口実態調査」の結果からピックアップします。
週1日以上、在宅で終日就業する雇用型就業者におけるテレワーカーの割合は16.6%を占め、前年度14.8%から上昇しています。また、テレワークをしたことがない人に対し、今後のテレワークの実施意向を尋ねたところ、「してみたいと思う」と回答した割合は44.7%と、前年度39.8%から上昇傾向です。
在宅勤務のプラスの効果としては、在宅勤務者の49.3%が「自由に使える時間が増えた」、48.4%「通勤時間・移動時間が減った」を回答、上位に挙げています。
通勤ラッシュのストレスを軽減するとともに、仕事の時間を自由に設定できることも高く評価しているようです。何より、都心では平均片道1時間ともされる通勤時間がなくなれば、1日2時間、週5日なら10時間を自由に使えることになります。
一方、サポート業界に目を向けると、一般社団法人日本コールセンター協会の「2019年度コールセンター企業実態調査」では、在宅テレコミュニケーター導入「予定なし」の企業が54社中38社(70.4%)を占めました。在宅勤務導入に積極的とは言えません。
在宅勤務を導入する最も大きな障壁は、セキュリティです。38社(70.4%)が、セキュリティ上の問題を理由として挙げています。続いて、労務や品質の管理を問題視しているようです。管理の煩雑さとサポート品質の低下を懸念しているのです。
在宅勤務の導入により、時間によるシフト制を行い、深夜や早朝など電話サポート時間外に対応時間を拡張できます。繁忙期や閑散期に合わせて人員を増減して、業務のスケーラビリティを柔軟にすることも可能です。
機器やフロアなど、物理的な初期コストの軽減も可能ですから、仮に在宅ワーカー向け端末の提供等を差し引いてもおつりが来る計算です。
サポート業務における在宅勤務導入のノウハウ
コールセンターで在宅勤務を導入するにあたっては、セキュリティ対策を万全にすることは必須条件です。シンクライアントなどの端末、VPN接続、暗号化など通信環境のインフラの整備も検討する必要があります。
さらに、テレワーカーの教育、人事評価や勤怠管理を定めることも重要です。技術的対策や物理的対策だけでは不十分であり、人的対策をしっかり行わなければなりません。
特に顧客サポートを扱うコールセンターでは、テレワーカーの役割やアクセス権限を的確に定める必要があります。
導入にあたっては、オペレーターの中でも経験を積み、特に信頼できるベテランのオペレーターから在宅ワーカーの希望を募ってもよさそうです。実際、長期勤務のベテランオペレーターの中から評価の高い希望者をテレワーカーに認定しているセンターもあります。
性善説の立場が理想とはいえ「目を離すと何をするか分からない」ことは人間の自然な心理です。評価されていないと感じたときにも同様の感情が生まれます。
育児や家事と仕事を同時にこなすオペレーターは、在宅とはいえ時間の確保に必死かもしれません。ワーカーの気持ちを理解し、ねぎらう必要があります。
したがって、在宅勤務者の放置は禁物です。できればテレビ会議などのシステムで顔の見えるコミュニケーションを密に行う必要があるでしょう。
総務省のテレワーク事例によると、株式会社アダムスコミュニケーションでは、バーチャルオフィスツールを使って音声や映像で連絡をしたり、リアルタイムで資料を共有したり、工夫をしています。
チームワークとチャットサポートが在宅勤務導入のカギ
在宅ワーカーの目線に立つと、在宅勤務は自由度が高い反面、「孤独感」に陥りやすいとも言われています。
不正防止だけでなく、テレワーカー同士の横のつながりを強化し、情報とノウハウを共有して「離れていても通じ合える」バーチャルなチームを作ることが成功のコツです。
モビルスが開発する、AIチャットボットによる自動応答とオペレーターによるチャット応答の複合型チャットシステム「mobiAgent(モビエージェント)」では、社内チャット用の「collaboSpace(コラボスペース)」機能が搭載されており、社員間の情報共有と顧客応対の両立が可能になります。このようなグループウェアなどのツールを活用するのもひとつの方法です。
在宅オペレーターは、電話によるサポートよりメールもしくはチャットサポートの方が向いています。電話では、自宅の環境によって周囲の音を気にする必要があります。チャットはその点、テキストのやりとりですから安心です。
とはいえ、電話とチャットのオペレーターの適正は異なります。リアルタイムの迅速な対応はもちろん、あまり堅苦しい表現でも、問い合わせたお客様は機械と対話しているように感じます。電話もチャットもできるマルチオペレーターを望まず、採用や研修の際に電話とチャットの適正を判断して、役割分担をしてもよいでしょう。
定型的な質問であれば、チャットボットを在宅勤務の代替として取り入れることも考えられます。人工知能はオペレーターの仕事を奪うものではなく、人工知能に任せられることは任せてしまうべきです。そして今後は、人工知能には難しい人間ならではのサポート領域を模索していく必要があります。
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