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Mobilus SupportTech Labでは、「SupportTech」業界の現在地を見える化することを目的に、国内で展開する関連サービスを分類した「SupportTechカオスマップVer.3(2023.02)」 を発表しました。

本記事では、Mobilus SupportTech Lab所長 石井智宏による
「SupportTechカオスマップ Ver.3(2023.02)」 」の解説として、顧客サポートにまつわる2023年現在の動向や技術トレンドについて紹介します。

Mobilus SupportTech Lab所長 石井智宏のコメント

『アフターコロナの顧客行動変化や、過去に例のないオペレータやSV人材の採用難に際して、顧客(住民)との接点の品質維持、さらにはCX(顧客体験)向上を目指しながら努力を行っているたくさんの企業・自治体の声を伺う機会が最近増えて参りました。

Mobilus SupportTech Lab所長
石井智宏

複数社の市場リサーチによると、企業のコンタクトセンターにおけるテクノロジー採用のトレンドが変わってきています。これまでは、どちらかというとオペレーターやSVによる有人対応と、テクノロジー(=ツール/自動化)の導入は区分して検討され、導入されるケースが多くありました。コロナ渦においてテクノロジーを活用した自動化事例が増加し、その結果、企業担当者の方々のテクノロジー導入への理解が進みました。最近では、現行オペレーションの中にテクノロジーを入れ込み(混ぜ込み)することで、より大きな効率性を得る事が検討されています。チャットボットとオペレーターチャットの連携。ボイスボットと電話インフラの連携。対応するオペレーターを支援する為の各種サジェストAI。オペレーションを管理する際に、WFMを活用した呼量予測と最適人員配置。こういったオペレーションとテクノロジーを組み合わせる、ハイブリッドなテクノロジー活用が推進されています。

また、テクノロジー導入の範囲もこれまで以上に広くなっています。
これまでは問い合わせを受けた時点からの効率化や満足度改善に焦点が当てられていました。コロナ渦初期での問い合わせ急増や、オペレーション継続リスクの増加により、多くの企業が顧客による自己解決を促す取り組みを強化しました。FAQの改善(FAQ作成ツール)や顧客のWeb上での行動履歴を活用したサジェスト表示(Web接客ツール)といった取り組みです。つまり、顧客が実際に問い合わせを行う前に支援を開始する、プロアクティブなサポートへと拡張がなされて来たのです。

この延長線上には、コンタクトセンターの役割がさらに拡大され、これまでのサポートに留まらず、認知や購入フェーズへの関与とその役割を拡大していくと考えられています。いわゆる企業のCX全体の最前線としての役割です。

それに伴い求められるテクノロジーの幅も拡大しています。
どちらかというとSupport Techテクノロジーはこれまで緩やかに成長してきました。2012年頃に始まったAIチャットボットブームでは「もう人が要らなくなるのでは無いか?」と、市場の期待感が一気に高まった時期もありました。しかしながら、実際の技術レベルはその期待値を超えることは無く、結果としてチャットボットはFAQを答える自動化ツールとしての位置づけで定着しました。

2022年末ごろから話題になっているOpenAI社のChatGPTというツールがあります。これまでのチャットボットとは異なり、膨大な基礎学習モデルを用いて、文章を自己生成するというものです。用意した答えのみを答えるこれまでのチャットボットとは一線を画した技術です。ChaGPTのベースとなっているGPT3.0(~3.5)はチャットのみならず、要約や意図抽出などへの活用も可能です。そのままというわけには行かないのですが、的確な事前処理や事後処理を咬ませることで非常に精度の高い処理を行う事が出来ます。過去何年も模索してきたことが、ついに利用に耐えるレベルで実現可能になってきたのです。

今後OpenAI社に留まらず、自然言語処理の領域におけるAIの発達は凄まじいものとなっていくと予想されます。その点から考えると、これまでの緩やかなSupport Tech市場は、これまでに見たことが無いぐらいの変化と進化を遂げる変化ポイントを迎えたと考えられます。人の役割が非常に重要とされているSupport領域に於いて、今出現し始めた新しい技術がどの様な貢献をしていくのか。大変楽しみです。

Mobilus SupportTech Lab所長   石井智宏

プロフィール
Mobilus SupportTech Lab所長 モビルス株式会社 代表取締役社長
石井 智宏(いしい ともひろ
ドイツ・アメリカ・中南米で半生を過ごし、現在市川市在住。
2009年にペンシルバニア大学ウォートンMBA取得。
早稲田大学卒業後、ソニー株式会社にて11年間ラテンアメリカ市場におけるセールスマーケティングに従事。その後ソニー元社長兼会長 出井 伸之氏が設立したクオンタムリープ株式会社のエグゼクティブパートナーとして、企業の海外進出を実行支援。2014年 モビルス株式会社 代表取締役社長に就任。


■ 「SupportTechカオスマップ Ver.3」に見られる主なトレンドポイント

① チャットサポートと連携できる「WEB接客ツール」への注目が集まる

カスタマーサポートはCXに内包されて垣根を失ってきている?

② 意図予測による検索アルゴリズムや高精度な独自AIと連携した「FAQシステム」の進化

自己解決チャネルの充実による呼量削減が依然として各企業の狙いか?

③ オペレータ人材不足による人的リソース活用最適化に向けた「WFM」への再注目

オペレータの稼働管理・補填によって人材不足を補う。

一方でまだまだExcelなどで管理している企業も目立つ模様。

④ 各業界で活用が広がる「チャットボット」は、この1年で新規参入と同時にブランドの淘汰も

他社製あるいは独自開発のAIと連携した一問一答型ボットの露出が増えている。

⑤ 各システムは「RPA」「CRM」などへの連携で、定型手続の完全自動化やACW(アフターコールワーク)効率化が図られる

各社事例では全体工数を5、6割削減したようなケースも見られるように。

⑥ 「ボイスボット」は一次受け、スパイク対応、24/365対応、定型手続きやアウトバウンド業務でも導入・活用が広がる


これまでの外線転送による連携から、電話インフラ内での内線連携が可能になることで、FAQ検索、シナリオ対応などの基本的な機能だけではなく、会話確認が可能なUIやオンプレミス対応なども各社で広がる。

⑦ 音声認識の進化に伴い「文章要約・感情分析・ナレッジ支援」が実用され対応改善やマーケティング、VOCにデータが活用

VOC分析ではGPT関連の技術を用いた文章要約なども行われつつある。急速に変化が起きる領域だと考える。

⑧ 「ビジュアルIVR」は、顧客の導線改善と経路分析で対応チャネルの最適化などノンボイス領域のDX化に貢献

民間企業に限らず住民からの問い合わせ導線を整理したい自治体からも注目が集まる。

※(調査: Mobilus SupportTech Lab)

「SupportTechカオスマップ Ver.3」
ダウンロード方法

「SupportTechカオスマップ Ver.3」は、下記URLよりダウンロード頂けます。
SupportTechカオスマップ Ver.3