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音声認識とは?仕組み・活用事例から導入メリット・選定ポイントまで

投稿日:2025年10月31日 | 更新日:2025年10月31日

コールセンター(コンタクトセンター)の皆さまにとって、音声認識技術は業務効率化や顧客対応力の向上に欠かせない存在になりつつあります。

「結局、どの業務にどう役立つのか」「どんな仕組みで動いているのか」といった疑問をお持ちの方も多いはずです。

本記事では、センター運営をよりスムーズにするために、音声認識の基礎から仕組み、コールセンターでの活用事例や導入メリット、選定ポイントまでをわかりやすく解説します。

自信をもって導入判断ができるよう、最後までご覧ください。

目次

    音声認識とは?

    音声認識とは、人の「話し言葉」をコンピューターが認識し、テキストやコマンドとして理解する技術です。代表例は、スマートフォンの音声入力、スマートスピーカーへの音声指示、会議の自動文字起こしなどです。

    近年、この技術は大きく進化し、音声から得られる情報のビジネス活用が加速しています。特に、DXの観点から、業務効率化、顧客対応力の向上、データ活用の高度化において、コールセンター(コンタクトセンター)業界で大きな注目を集めています。

    音声認識と音声合成・自然言語処理の違い

    音声認識と混同されやすい技術に「音声合成」や「自然言語処理(NLP)」がありますが、それぞれ役割が異なります。

    • 音声認識は、音声をテキストに変換する「入力系」の技術です。
    • 音声合成は、テキストを音声へ変換する「出力系」の技術です。
    • 自然言語処理は、テキストの意味や意図をコンピューターが理解し、文脈に応じて処理する技術で、チャットボットや検索エンジンなどで用いられます。

    つまり、音声認識は人とAIの対話における最初の「耳」の役割を担い、これらを組み合わせることで高度な会話型AIが実現します。

    音声認識の種類

    用途によって、大きく「ディクテーション型」と「コマンド型」に分類されます。

    • ディクテーション型は、話した内容をそのままテキストに変換するタイプ。議事録作成やカルテ入力、インタビュー文字起こしなどで用いられます。自然な発話を認識するため、長文の精度や誤認識への強さが重要です。
    • コマンド型は、あらかじめ登録されたキーワードや命令語を音声から検出し、それに応じて機器を動かすタイプ。スマートスピーカーの「電気をつけて」などが代表例で、リアルタイム性や誤動作防止が求められます。

    音声認識の仕組み

    音声認識システムは、どのように「人の声」を「意味のある文字」に変換しているのでしょうか。この仕組みを理解することは、より適切なシステム選定につながります。

    音響分析:音声をデジタルデータに変換する

    マイクで取得した音声はアナログ信号のままではコンピューターで扱うことができません。まずデジタル信号へ変換し、時間や周波数ごとに特徴量を抽出します。この特徴量には、音素やイントネーションなど、発話に含まれる重要なパターンが含まれており、ノイズ除去などの前処理もここで行われ、AIが扱いやすいデータに整形されます。

    音響モデル:特徴量から音素を抽出する

    抽出した特徴量がどの音素(言語の最小単位)に近いかを判別するのが音響モデルです。従来は時間経過で変化する音声の特徴を「隠れマルコフモデル(HMM)」で捉える手法が主流でしたが、現在はディープラーニングによる高度なモデルが使われることが多く、雑音環境や方言にも柔軟に対応できるようになっています。

    発音辞書:音素を単語に組み立てる

    音素だけでは意味が通じません。発音辞書と呼ばれるデータベースを用いて音素を単語に組み立てます。発音辞書は各単語がどの音素の並びで構成されるかを定義しており、たとえば「today = t, uh, d, ey」といった対応情報を持っています。これにより、音響モデルが抽出した音素列を実際の単語に変換できます。

    言語モデル:文脈に沿って適切な文章へ整形する

    最後に、発音辞書で特定した単語を文脈に沿った自然な文章へ組み立てるのが言語モデルの役割です。文章の前後関係や単語の出現確率をモデル化し、最も確からしい文章に整形します。膨大な学習データから最も確からしい文章を導き出すために、N-gramモデル※1やニューラルネットワーク※2が活用されています。

    ※1 N-gramモデル・・・文章を連続するN個の単語の並びで区切り、その出現確率を統計的に分析することで、文脈に沿った自然な文章を組み立てるための技術。

    ※2 ニューラルネットワーク・・・人間の脳の神経細胞を模倣したAIの情報処理モデル。データから学習を行い、画像認識や音声認識など、複雑な問題を解決するための基本的な土台となっている。

    音声認識の活用事例【業界別】

    音声認識は、コールセンター(コンタクトセンター)以外にもさまざまな業界で導入が進み、大きな成果を上げています。

    コールセンター:顧客対応の自動化・可視化

    コールセンターでは、音声認識の導入が急速に進んでいます。代表的な活用例は以下の三つです。

    • 通話内容をリアルタイムで文字起こしし、応対記録を自動化。属人化を防ぎ、後工程の分析にも活用可能。
    • 顧客の発話から感情を推定するセンチメント分析を行い、クレームの早期発見や顧客満足度の向上に貢献。
    • 優秀なオペレーターの会話をテンプレート化することで、応対品質の平準化と教育工数の削減にもつながっています。

    これらの取り組みにより、コールセンター全体の生産性と顧客体験(CX)の質が飛躍的に向上しています。

    医療:カルテ入力補助

    医師が診察中に口頭で所見を述べるだけで、その内容が音声認識によって自動的にカルテへ反映される仕組みが広がっています。これにより、診察後の記録作業を大幅に削減でき、医師はより多くの時間を患者対応に充てられるようになりました。さらに、医療用語や略語にも対応した専門的な音声認識エンジンの開発が進み、特に忙しい医療現場での導入も加速しています。

    製造業:現場でのハンズフリー操作

    工場や倉庫などの現場では、両手がふさがっている状態でも情報の入力や参照を行う必要がある場面が多くあります。音声認識を活用することで、作業中でも安全かつ迅速にマニュアル参照やチェック記録が可能になります。

    教育:講義の自動文字起こし

    教育現場でも、音声認識は講義録の自動化に大きな役割を果たしています。授業を録音しておけば自動で文字起こしされ、復習用テキストとして活用できます。学生の学習効率を高めるだけでなく、聴覚障がいのある学生への情報保障という観点からも有効です。

    メディア・コンテンツ制作:字幕生成

    YouTubeや動画配信プラットフォームでは、音声認識によって字幕を自動生成する機能が一般化しています。字幕の精度が向上すれば、視聴者の理解度や満足度が高まり、再生時間やエンゲージメントの向上にもつながります。

    音声認識導入のメリットとは?

    コールセンターに音声認識を導入することで得られる具体的なメリットを見ていきます。

    業務効率化と人的コスト削減

    音声認識を導入する最大のメリットの一つは、業務の自動化による効率化です。
    たとえば、これまで人手で行っていた議事録や報告書の作成、顧客対応履歴の入力を自動化し、大幅な工数削減が可能です。ヒューマンエラーや入力漏れを抑え、正確な記録管理を実現します。人手不足が深刻な業界では、貴重なリソースを戦略的な業務に振り向けることが可能になるでしょう。

    顧客体験(CX)の向上

    リアルタイムの音声認識を活用することで、顧客との対話を即座に可視化し、対応内容をその場で確認・記録できます。これにより、顧客対応の一貫性が保たれ、誤認識や説明の繰り返しといったストレスが軽減されます。過去のやり取りを正確に参照できることで、迅速かつ的確な対応が可能になり、顧客満足度やロイヤリティの向上にもつながります。

    データ活用とナレッジ共有の促進

    音声がテキスト化されることで、これまで記録されていなかった会話もデータ資産として蓄積できます。知見の共有やナレッジベース構築が進み、検索性の向上により必要な情報へ迅速にアクセスできる環境が整うことで、属人的な業務の可視化や標準化にもつながります。

    音声認識技術の選定ポイント

    最大限の効果を得るには、自社のコールセンターに合った技術を選ぶことが重要です。以下の選定ポイントを参考に、最適なソリューションを見極めてください。

    認識の精度

    導入前に必ず確認すべきなのが、音声認識の精度です。業務で使用するには、誤認識や変換ミスが極力少ないシステムが求められます。特に、業界の専門用語や略語への対応、方言や話し癖への柔軟性、雑音への耐性など、実運用で再現できるかが重要です。精度の高さは、単にAIエンジンの性能だけでなく、入力デバイス(マイク)、通信環境、話し手の発音、会話スピードにも大きく左右されるため、導入前に実際の利用シーンを想定したテストを行いましょう。

    リアルタイム性とレスポンス速度

    リアルタイムでの変換が求められるシーンでは、変換の速度も大きな選定基準になります。
    たとえばコールセンターや医療現場では、会話の流れを妨げずに即時でテキスト化されることが求められます。一方、録音後に処理するバッチ型の業務(議事録作成など)では、速度より精度を重視すると効果的です。

    セキュリティ・プライバシーへの配慮

    音声データには機密情報を含むケースも多くあります。医療・金融・行政などの分野では、個人情報や企業の内部情報が含まれるため、セキュリティ対策が万全なソリューションであることが求められます。
    クラウド型の場合はデータの暗号化や保存ポリシー、オンプレミス型であれば社内ネットワーク内で処理が完結できる構成があるかなど、導入先のセキュリティポリシーに適合するか確認が必要です。

    他システム連携の柔軟性

    音声認識技術を単体で利用するのではなく、CRMやチャットシステム、業務支援ツールなどと連携することで、業務効率化の効果は一層高まります。そのため、APIやSDK※3などが公開されているか、外部システムとどれだけ柔軟に統合できるかも重要な評価軸となります。

    ※3 SDK・・・Software Development Kit(ソフトウェア開発キット)のこと。特定の機能(例:音声認識)を、別のシステムやアプリケーションに組み込むために必要なプログラムやツール一式を指します。

    主な音声認識製品・ソリューション

    現在、市場には様々な音声認識サービスが登場しています。ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。

    Google Cloud Speech-to-Text

    120以上の言語・方言に対応し、クラウド上で高精度なリアルタイム音声認識を提供しています。動画や通話の自動字幕生成、マルチチャネル音声の処理にも対応しており、柔軟性と拡張性に優れています。ビジネスアプリケーションとの統合性が高く、GCP※4環境との連携がスムーズなのも特徴です。

    ※4 GCP・・・Google Cloud Platform(グーグル・クラウド・プラットフォーム)。Googleが提供するクラウドコンピューティングサービスの総称。

    Amazon Transcribe

    AWS(Amazon Web Services)が提供する音声認識サービスで、文字起こし機能に加え、話者の分離、語彙フィルターなどの高度な機能を備えています。医療業界向けの「Transcribe Medical」もあり、医療用語に特化した認識精度が特徴です。AWSの各サービスとの統合性が高く、既存のAWS環境に組み込みやすい点も強みです。

    Microsoft Azure Speech Service

    Azureの音声認識は、音声認識・音声合成・翻訳・音声感情分析など、包括的な音声ソリューションを提供しています。TeamsやDynamics 365など、Microsoft製品との統合が容易で、企業システムとの親和性が非常に高いです。カスタム音響モデルや言語モデルも作成でき、業務への最適化も柔軟に対応できます。

    MooA

    MooAは、独自の高精度な音声認識技術を搭載した、コールセンターを中心に活用されているオペレーション支援AIです。音声通話の文字起こしはもちろん、応対内容の要約やQA(質問と回答)ドラフトなど、多様なアウトプットを自動で生成可能です。オペレーターの応対記録や後処理業務を自動化することで、応対品質の均質化と大幅な業務効率化を実現します。さらに、PBXやCRMとの柔軟な連携が可能で、「顧客の声(VOC)」を効率的に収集・活用する仕組みを促進します。

    まとめ

    本記事では、音声認識の基礎から仕組み、業界別の活用事例、導入メリット、そして選定ポイントを紹介しました。

    音声認識は、単に音声をテキスト化するだけでなく、コールセンター(コンタクトセンター)の業務効率化と顧客対応力向上を両立させる、DX推進の鍵となる技術です。

    特に、通話のリアルタイム文字起こしはオペレーターの負担軽減と正確な応対履歴の自動化に直結します。さらに、「声」をデータ資産として活用し、感情分析やナレッジ共有を促進することで、顧客体験(CX)と生産性の向上に貢献します。

    システム選定にあたっては、現場で使う専門用語への認識精度、リアルタイム性、機密情報を守るセキュリティ対策を重視しましょう。

    本記事を、最適なソリューション選定の参考としてご活用いただけますと幸いです。最適なソリューション選びに迷われた際は、ぜひ弊社にご相談ください。

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