コールセンター(コンタクトセンター)へのAI(人工知能)導入は、自動応答による業務効率化、問い合わせ件数の削減、業務の平準化、オペレーターの負荷軽減などさまざまなメリットがあり、人手不足や高い離職率といったコールセンター業界が抱える慢性的な課題解決に期待されています。

一方で、やみくもにAIを導入しただけでは期待していた効果は得られません。自社が抱える課題に適したAIの活用方法を考えることが重要です。

本記事では、コールセンターの課題やAI導入時の注意点とともに、コールセンターにAIを導入し活用している事例を紹介します。

■目次


コールセンターの課題とは?

最初に、コールセンター業界が抱えている課題を把握しておきましょう。

「業務内容とスキルセットが合わず採用が進まない」「業務を開始できるまでの研修期間が長く、新人教育に時間がかかる」「せっかく採用しても直ぐに辞めてしまい離職率が高い」「結果として目標としているサービスレベルの維持が出来ない」といった声は、多くのセンターで聞こえてくる共通の悩みです。

多くのコールセンターにとって人手不足・高い離職率は慢性的な課題です。コロナ禍の2020年は、他業種から人材の流入が増え一時的に緩和されましたが、コロナ禍が落ち着き再び深刻な採用難が到来しています。離職率の高さも課題で「入社一年以内の離職率が7割を超える会社が全体の1/4を占めている」といった時代もあったほどです。

コールセンターの人手不足・高い離職率の主な理由は、負荷が高くストレスを感じやすい業務内容やキャリアアップを見込みづらい雇用形態、多様な働き方が難しい職場環境にあります。

慢性的な課題となっている、採用難や高い離職率によるコールセンターの人手不足解消のためには、オペレーターのストレス軽減(労働環境の改善)と、限られた人員でより多くの顧客問い合わせに対応する(業務の効率化)ことが必要です。教育体制や職場環境などの改善はもちろん、AIを活用することで、自動応答による業務効率化、問い合わせ件数の削減、業務の平準化、オペレーターの負荷軽減を期待できます。

コールセンターでのAIの活用方法は、チャットボットやボイスボットによる自動応答や、有人チャットや電話応対時のオペレーター支援(返答内容のサジェスト提示や後処理の自動化など)が挙げられます。


コールセンターでAIを導入した事例

次に、コールセンターでAIを活用している事例を紹介します。

1.SBI生命保険株式会社|書類請求手続きをボイスボットとRPAで完全自動化、約300時間を削減、苦情もゼロに

SBI生命保険では、年末調整、確定申告前は、生命保険料控除証明書発行の再発行の問い合わせが増加。オペレーターの負荷が高く、通常よりも人員を増員・研修する必要があり、時間やコスト面で負担が大きいという課題を抱えていました。

2021年10月よりAI電話自動応答システム(ボイスボット)「MOBI VOICE(モビボイス®)」を導入し、RPAと連携することで、生命保険料控除証明書の再発行手続きにおいて、受付から処理完了まで完全自動化を実現しています。また、「MOBI VOICE」であふれ呼の自動応答受付、営業時間外の自動応答受付などにも活用中です。

これにより、24時間365日生命保険料控除証明書の再発行受付が可能になり、オペレーターの負荷軽減、繁忙期の増員人数や研修時間の削減を実現しました。具体的には、受付から発送までの時間が短縮され、再発行に関する苦情や不満がゼロになり、再発行手続き対応の処理時間を約70%、年間約300時間(2人月)を削減。顧客満足度と従業員満足度の好循環にもつながっていると導入効果が出ています。

2.NECパーソナルコンピュータ株式会社|ボイスボット黎明期から導入、完了率8割超え、CX向上を実感

NECレノボ・ジャパングループのNECパーソナルコンピュータ株式会社は、2017年、当時プロトタイプの段階にあったAI電話自動応答システム(ボイスボット)「MOBI VOICE」を導入し、修理状況検索の音声自動応答サービスを開始しました。

当時、NECパーソナルコンピュータでは、オムニチャネル化を図り自動化を促進していく方針の中、音声応答も自動化できないか課題に挙がっていました。導入後は、「LAVIE」などの個人向けパソコンに関する問い合わせを受けるコールセンターの電話応対のうち、「修理状況検索」「簡易サポート」「修理見積金額のアウトバウンドコール」「修理受付」の4業務で「MOBI VOICE」を活用し、音声自動応答を行っています。

全コール数25万超の中、一定数をボイスボットで自動化できており、ボイスボットでの完了率84%を達成、電話がつながりやすくなりCX向上を実感しているとのことです。

3.株式会社SBI証券|AI電話自動応答で書類請求を自動化、48%の費用削減と完了率約70%を実現

株式会社SBI証券は、”ゼロ革命”と題した国内株式の売買手数料無料化などにより顧客が急増したことに伴い、大幅に問い合わせが増加したため、電話がつながりにくい状況が続いていました。手続きに必要な書類が請求できれば解決する、高度な知識を必要としない問い合わせも多いが、WEB請求や既存のIVR(電話自動受付)では請求できず、シナリオも長いため途中離脱が多いことが課題でした。

2023年4月より、臨機応変にシナリオを作成・変更できるAI電話自動応答システム(ボイスボット)「MOBI VOICE」を導入し、顧客の需要が高い書類請求の電話での自動受付を開始しました。

小規模での導入開始の中、平均58件/日を電話自動応答にて受付できるようになり、オペレーター1人分強の処理件数を自動化、一対応あたり約48%のコスト削減、電話自動応答での受付完了率が20%から68%へ大幅に増加といった効果が出ています。

4.株式会社NTTネクシア|生成系AIの活用検証で得た効率化や応対品質の向上やオペレーター教育への手応え

株式会社NTTネクシアは、生成系のAI技術を活用して、コールセンターの課題解決につなげていくための実証実験を行いました。この実証実験では、モビルスが開発したオペレーション支援AI「MooAⓇ(ムーア)」を活用し、オペレーターによる電話応対後の要約(後処理時間の短縮)と応対コンテンツ(QA)の自動生成、オペレーター教育等の課題解決について検証を行いました。

NTTネクシアでは、デジタルチャネル拡大の中、応対品質のばらつきや応対コンテンツの管理に要する稼働が増加。電話応対内容を把握し、以後活用するにあたっての稼働が膨大になっている課題を抱えていました。

生成AIを用いて「①応対履歴の自動投入」「②応対コンテンツ(QA)の自動生成」「③質問傾向や優良オペレーターの傾向把握による教育等の活用」の3点について、コール数1万件を対象に検証を行いました。

検証の結果、「アフターコールワークの効率化」「QAの自動生成による一次回答精度の向上」「オペレーターの教育・スキル向上等への活用」といった成果が出ています。


AIを活用したシステムの導入時の注意点

コールセンターでAIを活用することはメリットが大きいですが、導入する際に注意しなければいけないことがあります。ここでは、気を付けた方が良い点を3つ紹介します。

顧客満足度への配慮

コールセンターは顧客との直接的な接点を持つ重要な部門です。そのため、AIを活用したシステムを導入する際には、顧客対応やサービス品質に影響が及ばないように注意が必要です。顧客のニーズを理解し、高品質な対応を提供することが重要になるでしょう。

スタッフへの配慮

オペレーターは日々、顧客の問い合わせやニーズに迅速かつ的確に対処するために努力しています。AIを活用したシステムを新たに導入する際には、こうしたスタッフのモチベーション低下につながってしまわないように、十分な配慮をすることが大切です。適切な報酬制度やキャリアパスの提供、働きやすい環境の整備などは、スタッフのモチベーション向上に役立ちます。

新規リスクのモニタリングと対応

AIを活用したシステムを導入することによって、新たなリスクが発生する可能性も頭に入れておく必要があるでしょう。

例えば、新しいシステムの導入や自動化によってシステム障害が発生した場合の対応策や、リモートワークにおけるセキュリティリスク、といった可能性が考えられます。こうしたリスクの評価と対策を事前に実施し、予期せぬトラブルに備えることが重要です。どんなツールを導入した場合でも、リスクはつきものと思っておいた方がいいかもしれません。

まとめ

コールセンターでは、クレーム対応などストレスの高い仕事内容を背景に、オペレーターの採用難や高い離職率、人件費や運営コストの上昇など、日々課題に直面しています。

コールセンターの課題を解決する方法の1つとして、AIを活用した自動化・効率化が考えられます。ご紹介した注意事項に気を付けながら、ぜひ自社に合った方法で取り組んでいきましょう。

また、当記事を執筆するモビルスでは、コールセンターへのAI活用はもちろん、サポート業務の効率化や顧客満足度の向上まで実現するソリューションを開発提供しています。導入前の課題の明確化から導入後も収益を最大化するための支援まで総合的に提供しています。ぜひご相談ください。

AI電話応答システム(ボイスボット)「MOBI VOICE」紹介資料

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