コールセンターにおけるAI導入の流れ、メリット・課題とは?
投稿日:2026年7月31日 | 更新日:2026年7月30日
近年、コンタクトセンター(コールセンター)におけるAIの導入が急速に進んでいます。しかし、「人手不足や問い合わせ増加の対策としてAIを検討しているが、具体的にどの業務に導入すべきか分からない」「導入によるメリットや課題、具体的な進め方を知りたい」とお悩みの運営担当者の方も多いのではないでしょうか。
従来のコンタクトセンターでは、多様なチャネルから寄せられる問い合わせをオペレーターが一つひとつ対応していましたが、現場の負荷は高まる一方です。その一方で、顧客側からは「すぐに回答してほしい」「営業時間外でも対応してほしい」といった、より高度な要望が増えています。
本記事では、コンタクトセンターでAI導入が進む背景をはじめ、導入できる主な業務領域やツールの種類、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。さらに、失敗を防ぐための具体的な導入ステップについても順を追って解説していきますので、自社の業務効率化や顧客体験(CX)向上のヒントとしてぜひお役立てください。
<目次>- コンタクトセンターでAI導入が進んでいる背景とは?
- コンタクトセンターでAIを導入できる主な業務領域とは?
- コンタクトセンターに導入されるAIツールの種類とは?
- コンタクトセンターにAIを導入するメリットとは?
- コンタクトセンターにAIを導入する際の課題・デメリットとは?
- コンタクトセンターにAIを導入する流れとは?
コンタクトセンターでAI導入が進んでいる背景とは?
近年、コンタクトセンターではAIの導入が急速に進んでいます。その背景にあるのは、慢性的な人手不足や問い合わせ件数の増加、顧客ニーズの多様化です。従来のコンタクトセンターでは、電話やメール、チャットなど複数チャネルから寄せられる問い合わせを、オペレーターが一つひとつ対応する必要がありました。
しかし、問い合わせ量が増える一方で、オペレーターの採用や教育には時間とコストがかかるため、現場の負荷が高まりやすい状況になっています。
また、顧客側も「すぐに回答してほしい」「営業時間外でも問い合わせたい」「自分に合った情報を簡単に知りたい」といった期待を持ち、要望も高度化しています。
こうした環境の変化に対応するため、コンタクトセンターではAIチャットボットやボイスボット、生成AI、音声認識、通話要約などを活用し、業務効率化と顧客体験の向上を両立する取り組みが進んでいるのです。
AIはオペレーターを置き換えるものではなく、定型業務の自動化や回答支援、ナレッジ活用、応対品質の改善を支える手段として活用されるケースが増えています。
コンタクトセンターでAIを導入できる主な業務領域とは?
「コンタクトセンターのAI活用」と言っても、その活用の幅は顧客対応だけに留まりません。オペレーターの業務支援から応対履歴の作成、さらにはデータ分析や運用最適化まで、多岐にわたる領域でAIが力を発揮します。
ここでは、具体的にどのような業務領域でAIを導入できるのか、代表的な8つの活用例をご紹介します。

問い合わせ対応の自動化
AIを活用することで、顧客からの問い合わせ対応を一部自動化できます。代表的な例が、AIチャットボットやボイスボットによる一次対応です。営業時間、料金、手続き方法、配送状況、予約変更など、よくある問い合わせであれば、AIが顧客の質問内容を判別し、適切な回答を提示できます。
これにより、オペレーターが対応しなくても解決できる問い合わせを増やせるため、コンタクトセンター全体の対応負荷を軽減しやすくなります。また、電話が集中する時間帯や営業時間外でも一定の対応が可能になり、顧客の待ち時間削減にもつながります。
ただし、すべての問い合わせをAIだけで完結させるのではなく、複雑な相談や個別判断が必要な問い合わせは有人対応へ引き継ぐ設計が重要です。
オペレーターへの回答支援
AIは、顧客に直接回答するだけでなく、オペレーターの業務支援にも活用できます。たとえば、顧客の問い合わせ内容をもとに、関連するFAQ(よくある質問)やマニュアル、過去の応対履歴を自動で検索し、回答候補として提示する仕組みです。これにより、オペレーターは必要な情報を探す時間を短縮でき、よりスムーズに顧客対応を進められます。
特に、商品数やサービス内容が多い企業では、オペレーターがすべての情報を記憶するのは難しいため、AIによる回答支援の効果が出やすいです。新人オペレーターでも、AIが適切な情報を提示することで、一定水準の対応品質を保ちやすくなります。結果として、対応時間の短縮だけでなく、回答品質の平準化にも効果的です。
通話内容の文字起こし・要約
コンタクトセンターでは、通話内容の記録や応対履歴の作成に多くの時間がかかります。AI音声認識を活用すると、顧客とオペレーターの通話内容を自動で文字起こしできます。さらに、生成AIや要約AIを組み合わせることで、通話内容の要点や対応結果、次回対応に必要な情報を自動で整理することも可能です。
これにより、オペレーターが通話後に手作業で応対履歴を入力する時間を削減しやすくなります。後処理時間が短くなれば、次の問い合わせに移るまでの時間も短縮でき、コンタクトセンター全体の生産性向上につながります。また、記録内容の抜け漏れを防ぎ、応対履歴の品質を一定に保ちやすくなる点もメリットです。
FAQ・ナレッジ検索の高度化
AIは、FAQやマニュアルなどのナレッジ検索を高度化する領域でも活用できます。従来のキーワード検索では、顧客やオペレーターが入力した言葉とFAQ内の表現が一致しないと、適切な情報にたどり着きにくい場合がありました。
AI検索を活用すると、表現の揺れや質問意図を踏まえて、関連性の高いFAQやマニュアルを提示しやすくなります。たとえば「解約したい」「退会方法を知りたい」「契約をやめたい」といった異なる表現でも、同じ意図の問い合わせとして扱えるようになります。これにより、顧客の自己解決率を高めたり、オペレーターの検索時間を短縮が可能です。FAQやナレッジが十分に整備されている企業ほど、AI検索の効果を発揮しやすいです。
VOC分析・問い合わせ傾向の可視化
AIは、顧客の声であるVOCを分析する用途にも活用できます。コンタクトセンターには、商品やサービスへの不満や改善要望、問い合わせ傾向など、事業改善につながる情報が日々蓄積されています。
しかし、通話履歴やチャットログ、メール内容を人手で確認して傾向を把握するには大きな工数がかかります。AIを活用すれば、大量の問い合わせデータを分類し、頻出するトピックや不満の傾向を可視化しやすくなります。たとえば「特定の商品に関する問い合わせが増えている」「料金説明への不満が多い」「Web手続きの操作でつまずく顧客が多い」といった傾向を把握できます。
VOC分析の結果を商品改善やFAQ改善、Webサイト改善に活用することで、問い合わせ削減と顧客体験向上の両方に有効です。
応対品質のモニタリング・評価
コンタクトセンターでは、応対品質を一定に保つために、通話録音の確認やモニタリング評価が行われています。しかし、すべての通話を管理者が確認するのは現実的ではなく、一部の通話を抽出して評価するケースが一般的です。
AIを活用すると、通話内容を自動で解析し、NGワードの有無、説明漏れ、顧客感情の変化、会話の流れなどを確認しやすくなります。これにより、管理者は問題のある応対や改善余地の大きい応対を効率的に見つけられます。
また、評価基準を一定にしやすくなるため、評価者によるばらつきを抑える効果も期待できます。AIによるモニタリングは、オペレーターを監視するためではなく、応対品質を継続的に改善するための仕組みとして活用することが重要です。
教育・研修・フィードバック支援
AIは、オペレーターの教育や研修にも活用できます。たとえば、過去の応対データをもとに、よくある問い合わせパターンや模範的な回答例を整理し、研修教材として活用できます。また、通話内容やチャット内容をAIが分析し、説明不足だった点や改善すべき表現をフィードバックすることも可能です。
新人オペレーターに対しては、対応中にAIが回答候補や注意点を提示することで、実務を通じた学習を支援できます。管理者側にとっても、個々のオペレーターの課題を把握しやすくなり、より具体的な指導につなげやすくなります。教育やフィードバックを属人的に行うのではなく、データに基づいて継続的に改善できる点がAI活用の大きな特徴です。
シフト作成や入電予測などの運用最適化
AIは、顧客対応そのものだけでなく、コンタクトセンターの運用最適化にも役立ちます。たとえば、過去の入電件数や曜日、時間帯、キャンペーン、季節要因などのデータをもとに、今後の問い合わせ量を予測することができます。入電予測の精度が高まれば、必要なオペレーター数を見積もりやすくなり、シフト作成の効率化に有効です。
人員が不足すると待ち時間が長くなり、逆に人員が多すぎるとコストが増えるため、適切な人員配置はコンタクトセンター運営において重要な課題です。AIを活用することで、管理者の経験や勘に頼りすぎず、データに基づいた運用判断がしやすくなります。結果として、応答率の改善、待ち時間の短縮、運営コストの適正化も期待できます。
コンタクトセンターに導入されるAIツールの種類とは?
AIを自社のコンタクトセンターに組み込むためには、目的に応じた適切なツールを選択する必要があります。チャットや電話の自動化を担うツールから、社内ナレッジの検索や通話の要約・分析を支えるツールまで、その種類は様々です。
本章では、コンタクトセンターで導入されている主要なAIツールの特徴と、それぞれの具体的な活用シーンを詳しく解説します。

AIチャットボット
AIチャットボットは、Webサイトやアプリ、LINEなどのチャット画面上で、顧客からの問い合わせに自動回答するツールです。よくある質問や手続き案内、料金確認、予約変更、資料請求など、定型的な問い合わせへの対応に向いています。
従来のシナリオ型チャットボットでは、あらかじめ設定した選択肢に沿って回答する形式が中心でした。一方、AIチャットボットでは、顧客が自由に入力した文章の意図を読み取り、関連するFAQや回答を提示できます。これにより、顧客は電話をかけなくても疑問を解決しやすくなり、コンタクトセンターへの入電削減に効果的です。ただし、回答精度を高めるためには、FAQやナレッジの整備、回答範囲の設計、有人対応への切り替え導線が重要です。
モビルス株式会社
ボイスボット
ボイスボットは、電話での問い合わせに対して、音声認識や音声合成を使って自動対応するツールです。顧客が話した内容をAIが認識し、問い合わせ内容に応じて回答したり、必要な手続きを案内したりします。
たとえば、営業時間の確認、予約受付、配送状況の確認、資料請求、本人確認後の簡単な手続きなどに活用できます。電話チャネルを利用する顧客が多い業種では、チャットボットだけでは対応しきれない問い合わせをボイスボットで自動化すると効果的です。
また、入電が集中する時間帯の一次受付として活用すれば、オペレーターにつながるまでの待ち時間を短縮しやすくなります。
一方で、複雑な相談や感情的な問い合わせは有人対応が適しているため、ボイスボットで完結させる範囲を明確にすることが必要です。
モビルス株式会社
生成AIチャットボット・AIエージェント
生成AIを活用したチャットボットやAIエージェントは、顧客やオペレーターからの質問に対して、自然な文章で回答を生成するAIツールです。従来のFAQ検索やチャットボットよりも柔軟な受け答えがしやすく、複数の情報を整理して回答する用途に向いています。
コンタクトセンターでは、オペレーター向けの回答支援、顧客向けの問い合わせ対応、応対履歴の作成、FAQ改善案の作成などに活用できます。また、CRM(顧客管理)やFAQシステム、マニュアルなどと連携することで、社内ナレッジをもとに回答を生成する仕組みの構築にも役立ちます。
ただし、生成AIは誤った情報をもっともらしく回答してしまう「ハルシネーション」のリスクがあるため、参照する情報源や回答範囲を制御することが重要です。特に顧客対応に利用する場合は、有人確認や承認フロー、回答ログの確認体制を整えておく必要があります。
FAQ検索システム・ナレッジマネジメントツール
FAQ検索システムやナレッジマネジメントツールは、問い合わせ対応に必要な情報を整理し、検索しやすくするためのツールです。
AIを搭載したツールでは、キーワードの一致だけでなく、質問の意図や文脈を踏まえて関連するFAQやマニュアルを提示できます。これにより、オペレーターは顧客の問い合わせに対して、必要な情報をすばやく探しやすくなります。
また、顧客向けFAQとして公開すれば、顧客自身による自己解決の促進にも効果的です。問い合わせ内容を分析し、FAQに不足している項目や改善すべき回答を洗い出せるツールもあります。ナレッジが散在している企業では、AI導入の前提としてFAQやマニュアルを集約・整備することが重要です。
音声認識・通話録音解析ツール
音声認識・通話録音解析ツールは、顧客とオペレーターの通話内容をテキスト化し、分析できるようにするツールです。
通話内容を自動で文字起こしすることで、応対履歴の作成や管理者による確認作業を効率化できます。また、通話データを検索できるようになるため、特定の商品名やクレーム内容、説明漏れの有無などを後から確認がスムーズに行えるようになります。
従来は録音を聞き直さなければ把握できなかった情報も、テキスト化することによって分析や共有が容易になります。さらに、感情分析や会話分析と組み合わせれば、顧客満足度の低下につながる応対や改善すべき会話パターンの発見にも効果的です。
通話量が多いコンタクトセンターほど、音声データを活用できる体制を整えることで大きな効果が期待できます。
通話要約・応対履歴作成ツール
通話要約・応対履歴作成ツールは、通話内容をもとに、対応内容や顧客要望、次回対応に必要な情報を自動でまとめるツールです。
コンタクトセンターでは、通話後にオペレーターが応対履歴を入力する後処理業務が発生します。この作業に時間がかかると、次の問い合わせに対応するまでの時間が長くなり、全体の生産性にも影響を及ぼします。
AIによる要約機能を活用すれば、通話内容から重要な情報を抽出し、履歴入力のたたき台を自動で作成できます。オペレーターは内容を確認・修正するだけで済むため、後処理時間の削減につながります。また、記録内容の粒度をそろえやすくなり、引き継ぎや後続対応の品質向上にも効果的です。
感情分析・VOC分析ツール
感情分析・VOC分析ツールは、顧客の発言内容や声のトーン、問い合わせ内容を分析し、顧客の不満や要望を可視化するツールです。
コンタクトセンターには、顧客が商品やサービスに対して感じている不便、不満、期待が多く集まります。AIを活用することで、こうした声を大量の通話データやチャットログから抽出し、頻出するトピックや不満の傾向の可視化が可能になります。
たとえば、「特定の手続きに関する不満が増えている」「同じ質問が繰り返し発生している」「ある商品の使い方に関する問い合わせが急増している」といった状況を即座に把握できる点が強みです。これらの情報は、FAQ改善やWebサイトの改善、商品・改善のブラッシュアップなど、多方面に役立てられます。単なる問い合わせ対応にとどまらず、コンタクトセンターを顧客理解の起点として活用したい企業にとって有効なツールです。
オペレーター支援ツール
オペレーター支援ツールは、対応中のオペレーターに対して、回答候補や注意点、関連情報をリアルタイムで提示するツールです。
顧客の発話内容や入力内容をAIが解析し、適切なFAQ、トークスクリプト、確認項目などを画面上に表示します。これにより、オペレーターは必要な情報を探す時間を減らし、顧客対応に集中しやすくなります。特に、新人や経験の浅いオペレーターにとっては、対応品質を安定させるためのサポートとして有効です。
また、ベテランオペレーターにとっても、複雑な商品情報や最新のキャンペーン情報を確認しやすくなるメリットがあります。オペレーター支援ツールは、AIによって人を置き換えるのではなく、人の判断や対応を補助する役割として機能します。
モビルスが提供する「MooA®(ムーア)」は、独自のAI技術でオペレーターの負担軽減と総対応時間(AHT)の短縮化を図り、VOC活用を促進するオペレーション支援AIです。業務プロセスや専門要件にあわせた出力で後処理時間(ACW)を大幅に削減し、改善に直結するVOC分析でCX向上やリスクマネジメントを強化します。またPBX(構内交換機)やCRM連携も可能です。高精度な文字起こしで応対中の回答を支援しながら、現場の暗黙知を抽出したナレッジの継続改善を自動化し、属人性に左右されない応対品質を実現します。
モビルス株式会社
コンタクトセンターにAIを導入するメリットとは?
コンタクトセンターにAIを導入することは、単なるコスト削減や業務効率化に留まらず、現場の働く環境や顧客体験にも大きなプラスの効果をもたらします。オペレーターの負担軽減から顧客満足度の向上、さらにはVOCの活用まで、AI導入によって企業が得られる具体的な8つのメリットを詳しく見ていきましょう。

問い合わせ対応の効率化につながる
AI導入の大きなメリットは、問い合わせ対応の効率化です。AIチャットボットやボイスボットを活用すれば、よくある質問や定型的な手続きの自動案内が可能になります。たとえば、営業時間や料金、配送状況や手続き方法の確認や予約変更はAIが得意とする領域です。これにより、オペレーターはすべての問い合わせに対応する必要がなくなり、対応件数が多い現場でも負荷の軽減につながります。
また、複雑な相談や個別判断が必要な問い合わせにオペレーターが集中できる環境が整います。結果として、コンタクトセンター全体の対応効率の向上が期待できるでしょう。
オペレーターの後処理時間を削減できる
コンタクトセンターでは、顧客対応そのものだけでなく、通話後の応対履歴作成にも時間がかかります。AIによる文字起こしや要約機能を活用すれば、通話内容を自動で記録し、対応内容の要点を整理することが可能です。
オペレーターはAIが作成した要約を確認・修正するだけで済むため、手入力の負担を大幅に軽減できます。後処理時間が短縮されることで、次の問い合わせへの対応準備もスムーズに進められるようになります。
また、応対履歴の記載内容を統一できる点も大きなメリットです。これにより、記録のばらつきや抜け漏れを防ぐ効果も期待できます。後続対応や引き継ぎの品質を高めるうえでも、AIによる後処理支援は非常に有効です。
応対品質のばらつきを抑えられる
コンタクトセンターでは、オペレーターの経験やスキルによって応対品質に差が生じがちです。AIを活用すると、顧客の問い合わせ内容に応じて、関連するFAQやトークスクリプト、確認事項を即座に提示できます。
これにより、新人オペレーターでも必要な情報を参照しながらスムーズに対応できるようになります。また、説明漏れや確認不足を防ぐためのチェック項目をAIが表示することで、応対品質の安定化も図れます。
管理者側にとっても、通話内容の分析やモニタリングを通じて改善が必要なポイントを見つけられるため、非常に有効です。AIは、属人化しやすい応対品質を平準化し、全体のレベルアップを支えるツールとして大いに役立ちます。
新人オペレーターの立ち上がりを早められる
AIは、新人オペレーターの教育や実務定着を支援するうえでも有効です。コンタクトセンター業務では、商品知識からシステム操作、トークスクリプト、顧客対応の手順に至るまで、習得すべき内容が非常に多くあります。
対応中にAIが回答候補や関連ナレッジを提示すれば、新人でも情報を確認しながらスムーズに応対できます。また、応対後にAIが改善点や不足している説明を指摘してくれるため、実務を通じた学習効果も高まります。
管理者やスーパーバイザー(SV)がすべての対応を細かく確認しなくとも、AIの分析結果をもとに的確な指導ポイントを把握可能です。結果として、新人教育の属人化を防ぎ、立ち上がりまでの期間を短縮できます。
顧客の待ち時間を短縮できる
AI導入は、顧客の待ち時間短縮にも大きく寄与します。チャットボットやボイスボットで一次対応を行えば、顧客はオペレーターにつながるまで待たずに、必要な情報を得られる可能性があります。特に、問い合わせが集中する時間帯やキャンペーン実施時において、AIによる自動対応は非常に有効です。
また、AIが問い合わせ内容を事前に分類し、適切な部署や担当者に振り分けることで、たらい回しといった事態も防げます。オペレーター側にとっても、AIによる回答支援によって対応時間を短縮できれば、待ち呼の解消を実現できるでしょう。こうした待ち時間の短縮は、顧客満足度の向上にも直結する重要なメリットといえます。
24時間365日の対応がしやすくなる
AIチャットボットやボイスボットを活用することで、営業時間外の問い合わせが容易になります。有人体制だけで24時間365日の稼働を維持しようとすると莫大なコストがかかりますが、AIであれば夜間や休日でもよくある質問や簡単な手続きを案内可能です。顧客にとっては、営業時間を待たずに自己解決できるため利便性が向上します。
また、営業時間外に受け付けた問い合わせ内容をAIが整理し、翌営業日の有人対応に引き継ぐといった運用も有効です。すべてをAIで完結せずとも、一次受付や自己解決のサポートとして導入するだけで、十分な効果が期待できます。
FAQやナレッジの活用度を高められる
AIの導入は、FAQやマニュアルといった社内ナレッジを効果的に活用するきっかけとなります。従来は、FAQが存在していても、検索の利便性が低かったり、オペレーターに周知されていなかったりと、十分に活用されないケースが多く見受けられました。
しかし、AI検索を活用すれば、問い合わせの意図や文脈に応じて関連するナレッジが自動的に提示されます。これにより、オペレーターは情報を探す手間が省け、よりスムーズな顧客対応が可能になります。
また、顧客向けFAQにAIを組み合わせることで、顧客自身による自己解決も促進できるでしょう。AI導入を機にFAQやマニュアルを整備すれば、コンタクトセンター全体のナレッジ活用レベルを引き上げられるはずです。
VOCを商品改善やサービス改善に活用できる
コンタクトセンターには、顧客からの問い合わせや不満、貴重な要望が日々蓄積されています。AIを活用すれば、通話履歴やチャットログ、メール内容などを分析し、VOCの傾向を可視化できます。たとえば、同じ内容の問い合わせが繰り返し発生している場合、FAQやWebサイトの説明不足を即座に特定可能です。
また、特定の商品やサービスに対する不満が増えている場合、商品改善や運用見直しのヒントとなるでしょう。
膨大な応対履歴を人手ですべて確認するのは困難ですが、AIを用いることで効果的な傾向把握が実現します。コンタクトセンターを単なる問い合わせ対応の場にとどめず、顧客理解の起点として活用できる点は、AI導入の大きなメリットといえます。
コンタクトセンターにAIを導入する際の課題・デメリットとは?
AIは非常に強力なツールですが、すべての業務を万能にこなせるわけではありません。誤回答やハルシネーションのリスク、ナレッジ未整備による効果の限定化、セキュリティ対策など、導入前に把握しておくべき課題やデメリットも存在します。
本章では、AI導入を成功に導くために注意しておきたい6つのポイントを解説します。

AIだけでは対応できない問い合わせがある
AIは定型的な問い合わせや情報検索には強みを発揮する一方、あらゆる問い合わせに対応できるわけではありません。個別事情を踏まえた判断や感情的なクレーム、複雑な契約条件が絡むケースには、依然として有人対応の方が適しています。
無理にAIだけで完結させようとすると、かえって顧客体験を損なう恐れがあるため注意が必要です。AIで対応する範囲と、オペレーターに引き継ぐ範囲を明確に分けることが重要です。AIは人の対応を完全に置き換えるものではなく、業務を補完する仕組みとして設計することが得策といえます。
誤回答やハルシネーションのリスクがある
生成AIをコンタクトセンターで活用する場合、誤回答や「ハルシネーション」のリスクに留意しなければなりません。ハルシネーションとは、AIが事実と異なる内容をもっともらしく回答してしまう現象です。顧客対応において誤った料金や契約条件、手続き方法などを案内してしまうと、クレームやトラブルにつながる恐れがあります。特に、法務や金融、医療、保険といった正確性が求められる領域では、慎重な設計が必要です。
対策としては、「AIが参照する情報源をFAQやマニュアルに限定する」「回答前にオペレーターが確認する」「定期的に回答ログをチェックする」などが考えられます。AIの回答をそのまま信頼するのではなく、業務上許容できる範囲を決めて運用することが重要です。
FAQやマニュアルが整備されていないと効果が出にくい
AI導入の効果は、元となるFAQやマニュアル、応対履歴といったデータの品質に大きく左右されます。「FAQの内容が古い」「表現がわかりにくい」「重複が多い」「回答が不足している」といった状態では、AIも適切な回答を提示できません。
AI検索や回答支援ツールは、既存ナレッジを活用する仕組みであるため、ナレッジそのものが整理されていないと効果が限定的になります。また、部署ごとにマニュアルが分散している場合、どの情報を正とするかが曖昧になりやすいです。
そのため、AI導入前にはFAQやマニュアルの棚卸し、表記統一、更新ルールの整備が必要です。AIツールを入れるだけでなく、AIが活用できる情報基盤を整えることが成功の前提となります。
現場オペレーターに使われない可能性がある
AIツールを導入しても、現場オペレーターに使われなければ効果は期待できません。たとえば、操作が複雑だったり、提示される回答が実務に合っていなかったりすると、現場では使われなくなりやすいです。また、AI導入の目的が十分に説明されていないと、「監視されるのではないか」「仕事を奪われるのではないか」といった不安につながることも考えられます。その結果、現場の協力が得られず、導入が形骸化してしまうケースもあります。
AIを定着させるには、導入前から現場の課題をヒアリングし、実際の業務フローに合った設計にすることが重要です。さらに、利用方法の教育や、現場からのフィードバックを反映する改善サイクルも欠かせません。
既存システムとの連携に工数がかかる
コンタクトセンターでは、CTI※、CRM、FAQシステム、チャットツール、通話録音システムなど、複数のシステムが使われていることが多いです。AIを効果的に活用するには、これらの既存システムと連携させる必要があります。たとえば、顧客情報を参照して回答を出す、通話内容をCRMに自動登録する、FAQデータをAI検索に取り込むといった連携が考えられます。
しかし、システム構成が複雑な場合や、古いシステムを利用している場合は、連携に工数がかかることがあります。また、データ形式や権限管理、セキュリティ要件の確認も必要です。AIツールの機能だけで判断するのではなく、既存環境にどのように組み込めるかを事前に確認することが欠かせません。
※CTI(Computer Telephony Integration):コンピューターシステムを用い、電話やFAXなどを連動させ、電話応対業務の高度化を実現する技術
個人情報・機密情報の取り扱いに注意が必要
コンタクトセンターでは、氏名、住所、電話番号、契約情報、問い合わせ内容など、多くの個人情報を扱います。AIツールを導入する際は、これらの情報がどのように保存・処理・利用されるのかを確認する必要があります。特に、生成AIやクラウド型AIサービスを利用する場合は、入力データが学習に使われるのか、外部に送信されるのか、保存期間はどうなっているのかを確認しなければなりません。
また、社内の機密情報や未公開情報をAIに入力する場合も注意が必要です。個人情報保護や情報セキュリティの観点から、利用ルールやアクセス権限、ログ管理の仕組みを整えることが求められます。AI導入を進める際は、現場部門だけでなく、情報システム部門や法務部門とも連携し、セキュリティ要件をクリアにしていきましょう。
コンタクトセンターにAIを導入する流れとは?
AI導入のメリットと課題を理解したら、次は具体的な検討・運用のプロセスへと進みます。いきなり大規模なシステムを導入して失敗することを防ぐためには、現状課題の整理からPoC(実証実験)、現場のフィードバックの反映まで、正しい手順を踏むことが重要です。ここでは、失敗しないAI導入の8つのステップをご紹介します。

現状課題を整理する
AI導入の第一歩は、現状のコンタクトセンター業務で何が課題になっているのかを整理することです。たとえば、「入電数が多い」「待ち時間が長い」「後処理時間が長い」「FAQが使われていない」「応対品質にばらつきがある」など、課題は企業によって異なります。
管理者だけでなく、実際に顧客対応を行うオペレーターやSVからもヒアリングを行い、現場の負担を正確に把握することが肝要です。
また、応答率、平均処理時間、後処理時間、自己解決率、FAQ利用率などの数値も併せて確認しておくことで、より客観的な判断が可能になります。現状を正しく把握することで、導入後の効果検証にも役立ちます。
AI導入の目的とKPIを決める
課題が明確になったら、次は導入目的とKPIの設定です。「問い合わせ件数の削減」「後処理時間の短縮」「新人の立ち上がり早期化」「顧客満足度の改善」など、目的に応じて選ぶべきAIツールも変わります。
目的が曖昧なままだと、導入後に成功か失敗かを判断しにくくなります。そのため、平均処理時間の削減率、自己解決率、有人対応への転送率、後処理時間、FAQ利用率、顧客満足度など、測定可能なKPIを設定しておくことが大切です。導入目的とKPIを明確にすることで、ツール選定やPoCの評価基準も定めやすくなります。
対象業務を絞り込む
対象業務は、最初から広げすぎず、効果が見えやすい領域に絞るのが定石です。FAQ回答の自動化や通話要約、オペレーター向け回答支援など、まずは、問い合わせ件数が多い定型業務や、後処理時間が長い業務など、効果を測定しやすい領域から始めると良いでしょう。
一方、個別判断や高い専門性が求められる業務は、いきなりAIで自動化するよりも、オペレーター支援から始める方が現実的です。対象業務を絞り込むことで、導入効果を検証しやすくなり、現場への定着も進めやすくなります。
FAQ・マニュアル・応対履歴などのデータを整備する
AIを効果的に活用するには、FAQやマニュアル、応対履歴などのデータ整備が欠かせません。AIは、既存のナレッジや過去データをもとに回答候補を提示したり、問い合わせ傾向を分析したりします。そのため、「元になる情報が古い」「重複している」「表現がばらばら」「内容が不足している」状態では、十分な効果を発揮できません。
導入前には、「FAQの棚卸し」「不要な情報の削除」「表記ルールの統一」「最新情報への更新」を行う必要があります。また、応対履歴を活用する場合は、記録形式や分類項目が一定になっているかも確認しましょう。データ整備は手間がかかりますが、AI導入の成果を左右する重要な工程です。
導入するAIツールを選定する
対象業務と目的が決まったら、それに合ったAIツールを選定します。問い合わせ対応を自動化したい場合はAIチャットボットやボイスボット、後処理時間を削減したい場合は通話要約ツール、応対品質を改善したい場合は音声解析やモニタリング支援ツールが候補になります。
ツール選定では、機能の豊富さだけでなく、自社の業務フローに合うかどうかを確認することが重要です。また、既存のCRMやCTI、FAQシステムと連携できるか、セキュリティ要件を満たしているかも確認しましょう。現場が使いやすい画面や操作性になっているかも、定着率に大きく影響します。複数のツールを比較する際は、導入目的とKPIに照らして評価することが大切です。
小規模なPoCで効果を検証する
AIツールを選定したら、いきなり全社導入するのではなく、小規模なPoC(実証実験)で効果を検証することが望ましいです。PoCでは、対象業務や対象チームを限定し、実際の業務データを使ってAIがどの程度効果を出せるかを確認します。
たとえば、特定カテゴリの問い合わせだけをチャットボットで対応する、一定期間だけ通話要約を試す、特定チームで回答支援ツールを利用するなどの方法です。PoCを行う際は、事前にKPIや評価基準を決めておきます。効果が出た点だけでなく、回答精度、操作性、現場負荷、顧客反応なども確認することが必要です。小さく検証することで、本格導入前に課題を把握し、改善につなげやすくなります。
現場オペレーターのフィードバックを反映する
AIを導入する際、現場オペレーターのフィードバックを反映することが成功の秘訣です。実際にツールを使うのは現場のオペレーターやSVであるため、操作性や回答内容が業務に合っていなければなかなか定着しません。
PoCや初期導入の段階で、使いにくい点、不要な表示、回答候補の精度、業務フローとのズレなどを確認する必要があります。現場の声をもとに設定やナレッジを改善すれば、AIツールの実用性を高めることが可能です。
また、オペレーターに対して導入目的を丁寧に説明し、業務負荷を減らすための仕組みであることを伝えることも大切です。現場を巻き込みながら改善することで、AIが日常業務に定着しやすくなります。
本格導入後も改善を継続する
AIは、一度導入して終わりではありません。顧客の問い合わせ内容や商品・サービスの情報は変化するため、FAQやマニュアル、AIの設定も継続的に更新します。導入後は、自己解決率、有人転送率、後処理時間、応答率、顧客満足度などのKPIを定期的に確認することが重要です。
また、AIが対応できなかった問い合わせや、誤回答が発生したケースを分析し、ナレッジや導線を改善していきます。現場オペレーターやSVからのフィードバックも継続的に収集するとよいでしょう。改善サイクルを回し続けることで、AI導入の効果を長期的に高めることが期待できます。
まとめ
本記事では、コンタクトセンターにおけるAI導入の背景や具体的な活用領域、メリット・課題、そして導入の流れについて詳しく解説してきました。
慢性的な人手不足や顧客ニーズの多様化が進むなか、AIはオペレーターを完全に置き換えるものではなく、定型業務の自動化や回答支援、後処理業務の効率化などを通じて「人と組織を支える強力なパートナー」として機能します。しかし、AIの恩恵を最大限に受けるためには、事前のナレッジ整備や適切なツール選定、そして現場を巻き込んだ継続的な改善サイクルが欠かせません。
「AIを活用して現場の負担を減らしたい」「データに基づいたCX向上を実現したい」とお考えの際は、まずは自社の課題整理から、コンタクトセンターのDXに取り組んでみてはいかがでしょうか。
本記事を執筆するモビルスでは、CRM(顧客管理システム)や有人チャット・生成AIとの連携が可能なAIボイスボットや、コンタクトセンター運用の肝ともなる、ナレッジベースの構築による回答サジェストやマニュアル検索を可能にするオペレーション支援AI「MooA®(ムーア)」をはじめ、コンタクトセンター(コンタクトセンター)のDX推進を通じて企業の競争力を高め、収益を最大化するための総合的な支援を提供しております。
AIボイスボットやAIチャットボット、自己解決を促すビジュアルIVRなど、顧客満足度につながる幅広いニーズに対応できるソリューションを開発提供しています。ぜひご相談ください。
MooA
MooA®(ムーア)は生成AIや独自のAI技術を取り入れて、対話ログからAIがQAドラフトを自動生成し、ナレッジのメンテナンス作業を大幅に効率化するオペレーション支援AIです。高精度な文字起こしで応対中の回答を支援しながら、現場の暗黙知を抽出したナレッジの継続改善を自動化し、属人性に左右されない応対品質を実現します。
また、業務プロセスや専門要件にあわせた出力で後処理時間(ACW)を大幅に削減し、改善に直結するVOC分析でCX向上やリスクマネジメントを強化します。
MOBI VOICE
MOBI VOICE(モビボイス®)は、企業や自治体の電話自動応答に必要なすべての機能をカバーしたボイスボットソリューションです。注文や手続きの一次受付、自由自在に追加・分岐できるシナリオ作成、IVRでの自動音声対応、アウトバウンドコールなど必要な電話業務をもれなく実現できます。




































